一 福岡地方檢察廳柳川支部檢事が福岡地方裁判所柳川支部に對し公訴を提起すに當り之の公判請求書に誤つて所屬廳を柳川區裁判所檢事局管轄裁判所を柳川區裁判所と表示したからといつてその公訴提起を不適法ということはできない。 二 檢事松本一成の本件控訴申立書は昭和二二年六月二六日(控訴期間最終日)附で福岡高等裁判所宛になされている。そして、この控訴申立書には、福岡地方裁判所柳河支部使用のゴム印が押捺せられ前記日附が記入せられ、且つ同支部判事及び書記がそれぞれ確認の捺印をしている。その上記録中には前記日附に控訴の申立があつた旨を翌二七日福岡地方裁判所柳河支部が被告人に通知した葉書の寫が綴込まれている。これらをもつて見れば、本件控訴申立が適法の期間内に適法になされたことを認めることができる。ただ記録中に存する接受證明書によれば、本件控訴申立書は昭和二二年六月二六日午後七時提出せられた旨が記載され、作成者は、柳河簡易裁判所宿直裁判所書記Aとなつている、しかし、本件におけるがごとく地方裁判所支部と簡易裁判所とが同一建物内に存する場合には、宿直員は双方の受付事務の掌に當るものであることは當裁判所に顕著な事實であつて、福岡高等裁判所宛の本件控訴申立が控訴期間内に原裁判所である福岡地方裁判所柳河支部に到達したことは疑を入るる餘地がない。
一 公判請求書中の檢事の所屬廳名及び管轄裁判所名の誤記と公訴提起の適否 二 簡易裁判所の宿直員による地方裁判所支部事件の控訴申立書の受付と控訴の適否
刑訴法71條,刑訴法291條,刑訴法396條,檢察廳法5條
判旨
公判請求書の記載に旧制度下の名称が使用されていても、庁印等から真実の提出機関を容易に認識し得る場合は形式上の瑕疵にすぎず、また原裁判所と同一建物内の簡易裁判所宿直員への提出も期間内であれば有効である。
問題の所在(論点)
公判請求書の表示に誤りがある場合に公訴提起の効力が認められるか、および原裁判所と同一建物内にある別裁判所の宿直員に対する控訴申立書の提出が、期間内の適法な申立として認められるか。
規範
公訴提起等の訴訟手続に形式上の不備がある場合であっても、書面全体の記載や庁印の押捺状況等から、真実の提出者及び提出先を容易に認識し得るときは、その瑕疵は単なる形式上のものにすぎず、実質的に適法な手続として認められる。また、原裁判所と同一建物内に存在する別の裁判所の宿直員が受付事務を共同して行っている事態においては、当該宿直員への提出をもって原裁判所への提出と解することができる。
事件番号: 昭和25(あ)2628 / 裁判年月日: 昭和27年7月15日 / 結論: 棄却
かりに、起訴状謄本の送達が適式でなかつたとしても、本件においては、被告人が異議を述べていないのであつてかかる場合には刑訴四二条の問題とならない。
重要事実
検察官が被告人を起訴した際、公判請求書に憲法施行前の旧制度下の名称である「柳河区裁判所検事局」等の不動文字が印刷された用紙を訂正せず使用した。しかし、当該書面には新制度下の「福岡地方検察庁柳河支部印」が鮮明に押捺されていた。また、控訴申立に際し、控訴期間最終日の午後7時に、原裁判所である福岡地方裁判所柳河支部と同一建物内に所在する柳河簡易裁判所の宿直員に対し、福岡高等裁判所宛の控訴申立書を提出した。
あてはめ
公判請求書の不備については、旧制度の廃止と新制度への移行は一般周知の事実であり、かつ福岡地方検察庁柳河支部の庁印が押捺されている以上、実質的には適法な検察庁支部から裁判所支部に対してなされたものと容易に認識し得る。また、控訴申立については、地裁支部と簡裁が同一建物にある場合、宿直員が双方の受付事務を担当することは顕著な事実である。現に地裁支部のゴム印や判事らの確認印があり、被告人への通知もなされていることから、期間内に原裁判所に到達したものと認められる。
結論
本件公訴提起および控訴申立は、形式上の軽微な瑕疵はあるものの、実質的には適法な手続として有効である。
実務上の射程
訴訟行為の効力が形式的な不備によって否定されるか否かの判断において、相手方の誤認の可能性や実質的な認識可能性を重視する「実質的把握」の考え方を示す。特に、組織改編期の名称錯誤や、裁判所の受付事務の運用実態(宿直の共通化)を考慮した柔軟な解釈を認めた事例として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1831 / 裁判年月日: 昭和24年5月26日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隱匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從つてそれらの物件の所…
事件番号: 昭和24(れ)1973 / 裁判年月日: 昭和24年11月1日 / 結論: 棄却
公判請求書の公訴事実に、被告人の自宅において隠匿所持したとあるのを、原判決摘示事實のように、自動車で運搬して所持したと認定しても、それは本件銃砲等不法所持の態様が異なつただけで基本たる事實に相違を來たしたのでないことは、右の公判請求書の公判事實と原判決摘示事實第一とを比照すればおのずから明らかである。よつて原判決には所…
事件番号: 昭和25(れ)1387 / 裁判年月日: 昭和25年12月21日 / 結論: 破棄差戻
官報に掲載された第一回公判期日の召喚状の謄本に、被告人氏名「来海A」を、海Aと表示したのでは、公示送達の方式として召喚状の謄本を官報に掲載することを、適法に履踐したものということはできない。
事件番号: 昭和23(れ)2033 / 裁判年月日: 昭和24年5月17日 / 結論: 棄却
原判決は被告人がブローニング拳銃一挺を所持していた事實を證據によつて認定している。既にブローニング拳銃というからには、反對の判斷を下すべき特別の理由がない限り、當然に發射機能を具えたものと推断せられる。それ故に原審がその發射機能の有無を特に明確にしなかつたからとて、論旨第一點に主張されているように審理不盡の違法を犯した…