辯護人が公判期日に始末書作成者を證人として申請したに拘わらず刑訴應急措置法第一二條第一項但書の事由なくしてこれを却下し右始末書を證據に採つた判決は違法である。
刑訴應急措置法第一二條第一項違反
刑訴應急措置法12條1項
判旨
被告人に反対尋問の機会を与えることが不可能または著しく困難である等の特段の事情がない限り、証人尋問の申請を却下しながら、その者の供述録取書類を証拠として採用することは許されない。
問題の所在(論点)
被告人が証人として喚問を申請した者の供述書類について、裁判所が当該証人尋問の申請を却下しながら、その書類を証拠として採用することが、伝聞排除法則(刑訴応急措置法12条1項、現行法320条1項等)および反対尋問権の保障に違反するか。
規範
伝聞証拠の証拠能力について、憲法上の対面・反対尋問権(憲法37条2項)を実質的に保障する観点から、被告人に尋問の機会を与えることが不可能または著しく困難である等の例外的事情がない限り、証人申請を却下したままその者の供述書類を罪証に供することはできない。
重要事実
被告人の弁護人が証人Bの喚問を申請したが、原審はこれを留保した後に最終的に却下し、証人尋問を行わないまま結審した。一方で、原審は証人Bが作成提出した始末書(供述書類)の内容を犯罪事実認定の証拠の一部として採用し、有罪判決を言い渡した。なお、記録上、Bを尋問することが不可能または著しく困難であるといった事情は認められなかった。
事件番号: 昭和26(れ)2478 / 裁判年月日: 昭和27年8月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴応急措置法13条2項(現行の刑事訴訟法においても同様の趣旨が引き継がれている証人尋問における供述録取書の証拠能力等に関する規定)は、憲法37条1項が保障する公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において上告を提起した際、弁護人が刑訴応急措置法…
あてはめ
本件において、原審は弁護人から申請のあった証人Bの尋問を行わず、これを却下している。証人Bを尋問することが不可能または著しく困難であるという事情も記録上認められない。それにもかかわらず、Bの作成した始末書を罪証として採用したことは、被告人に反対尋問の機会を与えることなく伝聞証拠を証拠としたものであり、適正な証拠調べの手続きを欠くものである。
結論
原審の証拠採用は刑訴応急措置法12条1項に違反し、判決に影響を及ぼす法令違反があるため、原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
現行刑訴法321条1項各号等の伝聞例外規定の解釈において、反対尋問権の保障(憲法37条2項)という実質的根拠を強調する際の論拠となる。特に、供述不能等の要件を厳格に解すべき場面や、手続的公平性を欠く証拠採用を攻撃する場面で活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)2072 / 裁判年月日: 昭和26年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護人が自ら証拠申請を抛棄し、それが被告人の意思に反しない場合、裁判所が当該証人の尋問を行わずに審理を終結しても憲法37条2項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、原審(控訴審)において当初予定していた証人の証拠申請を自ら抛棄した。記録上、この証拠申請の抛棄が被告人本人の意思に反して…
事件番号: 昭和27(あ)2889 / 裁判年月日: 昭和28年6月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が第一審において証拠とすることに同意した供述調書について、任意性に疑いがない限り、証拠能力を認めた原判断に憲法違反や違法はない。 第1 事案の概要:経済調査官が作成した供述調書について、第一審の公判手続において被告人側が証拠とすることに同意していた。その後、上告段階において、当該調書を証拠と…
事件番号: 昭和23(れ)116 / 裁判年月日: 昭和23年5月29日 / 結論: 棄却
職權をもつて原判決を調査するに、原判決はその法律適用の項において、「昭和二二年一〇月二六日法律第一二四號第一〇條」と記載しているのであるが、同法律は刑法の一部改正に關する法律であつて、同法には第一〇條という規定は存在しないのみならず、原判決が同法をここに引用したのは、本件被告人の公程價格を超えて、うるち精米を賣買した數…
事件番号: 昭和25(れ)1618 / 裁判年月日: 昭和26年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において初めて主張された、原審が認定していない事実に基づく緊急避難の主張は、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人A漁業会代表者等による犯行について、原審では緊急避難(刑法37条)の主張はなされておらず、原判決においてもその前提となる事実は認定されていなかった。被告人側は、上…