一 検事が第二審において第一審判決書理由摘示の事実とおり公訴事実を陳述しても、旧刑訴法第三四五条第一項に違反するものではない。 二 第一審裁判所が辯護人の證人喚問申請を却下した場合に第二審裁判所がその證人に對する司法警察官の聴取書を證據とするには請求の有無にかかはらず同人を公判期日に訊問する機關を被告人に與えなければならないのに原審においてそのことがなかつたのは刑訴應急措置法第一二條第一項の精神に反するというのである、しかし刑事訴訟法および刑訴應急措置法上さようの事が要求されていないことは既に當裁判所の判例にもなつている。(昭和二三年(れ)第八九二號同一二月一六日第一小法廷判決)
一 検事が被告事件の要旨を陳述する方法 二 第一審において辯護人の證人申請を却下し第二審で同證人に對する司法警察官の聴取書を採證することの可否
旧刑訴法345条1項,刑訴應急措置法12條1項
判旨
被告人の自白以外に、被害者の証言等により犯罪の模様や被害の発生が明白である場合には、犯意や共謀の点について自白を証拠としても補強証拠の原則に反しない。
問題の所在(論点)
犯罪の主観的要件(犯意や共謀)について、他の客観的証拠が存在する場合に、被告人の自白を認定の証拠とすることが補強証拠の原則に抵触するか。
規範
補強証拠が必要とされるのは犯罪の客観的事実であり、犯罪の模様や被害の発生が他の証拠により明白であるならば、犯意や共謀といった主観的態様については、被告人の自白を証拠として認定に用いることが可能である。
重要事実
被告人は共犯者Bと共に被害者Aを恐喝し、金一万円を交付させたとして恐喝罪で起訴された。原審は、被告人の自白に加え、被害者Aの証言を総合して犯罪事実を認定した。これに対し被告人側は、犯意および共謀の点について自白のみで認定したことは、自白のみによる有罪判決を禁じた規定(刑訴応急措置法10条3項、現憲法38条3項参照)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件では、被告人の自白以外に被害者Aの証言という証拠が存在し、これらを総合することで、被告人がBと共に被害者を恐喝して現金を交付させたという犯罪の模様および被害の発生という客観的事実が既に確認されている。このように客観的情勢から犯罪事実が明白である以上、被告人が主観的な犯意や共謀を否認したとしても、自白をこれら主観的要素の認定に用いることは、自白のみを証拠としたことには当たらないと解される。
結論
主観的態様の認定に自白を用いることは適法であり、原判決に憲法または法律違反の点はない。
実務上の射程
補強証拠の範囲に関する判例であり、客観的犯罪事象(罪体)が他の証拠で立証されていれば、主観的要素については自白のみによる認定も許容されるという実務上の運用を支える。現在の憲法・刑訴法下の実務においても同様の論理が維持されている。
事件番号: 昭和25(れ)1952 / 裁判年月日: 昭和26年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の供述が有罪認定の唯一の証拠であるとの主張に対し、判例は他の間接証拠や証人尋問の結果を総合すれば犯罪事実の認定が可能であるとし、補強証拠の要否にかかわらず実質的な証拠能力を認めた。 第1 事案の概要:被告人Aが検事に対し行った聴取書の内容が、原判決の有罪認定において実質上唯一の証拠となってい…