一 貯金局名儀を以て發行せられる郵便貯金通帳は、公法關係において作成せられるものであるか、私法關係において作成せられるものであるかの問題に拘りなく、右の公文書であつて所論のような私文書ではない。(昭和五年(れ)第二〇三三號同六年三月一一日言渡大審院判決参照)それは又刑法第一六二條にいわゆる有價證券でもない。 二 甲府郵便局長Aの提出した被害届において被害金額を訂正した押印が届出人の署名の下の押印と異ることは所論の通りであるが元來被害届は被害の事實を證明し得るものであることを以て事足り、特別の形式を必要とするものではない、それが眞正に成立したものであるか否かその内容が眞實に合致するものであるか否かは、もつぱら裁判所の自由心證によつて判斷し得るところである。 三 憲法第三六條にいわゆる「残虐な刑罰」とは不必要な精神的肉體的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を意味するのであつて事實審の裁判官が普通の刑を法律の許す範圍内で量定した場合においてそれが被告人の側からみて過重な刑であるとしてもこれを以て直ちに残虐な刑罰を禁止した憲法の規定に違反するものとはいえない。當裁判所屡次の判例(昭和二二年(れ)第三二三號同二三年六月二三日言渡大法廷判決)
一 郵便貯金通帳の性質 二 被害届書の記載内容の眞僞と自由心證 三 憲法第三六條にいわゆる「残虐な刑罰」の意義
刑法155條1項,舊刑訴法337條,憲法36條
判旨
郵便貯金通帳は刑法155条1項の「公務所又は公務員の作るべき文書」に該当し、公法・私法の関係を問わず公文書にあたる。また、量刑が被告人にとって過重であっても、法律の範囲内であれば直ちに憲法36条の「残虐な刑罰」には該当しない。
問題の所在(論点)
1. 郵便貯金通帳は刑法155条1項の「公務所又は公務員の作るべき文書」にあたるか。2. 法定刑の範囲内での量刑が「残虐な刑罰」にあたり得るか。
規範
刑法155条1項の「公務所又は公務員の作るべき文書」とは、公務員がその職務上作成すべき文書を指し、公法上の事務か私法上の事務かを区別しない。また、憲法36条の「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指し、法定刑の範囲内での量刑は原則としてこれに当たらない。
事件番号: 昭和24(れ)2852 / 裁判年月日: 昭和25年2月24日 / 結論: 棄却
論旨は窃取しまたは騙取した郵便貯金通帳を利用して預金を引出す行爲は賍物の處分行爲として罪とならないと主張するのである。しかし賍物を處分することは財産罪に伴う事後處分に過ぎないから別罪を構成しないことは勿論であるが窃取または騙取した郵便貯金通帳を利用して郵便局係員を欺罔し眞實名儀人において貯金の拂戻を請求するものと誤信せ…
重要事実
被告人は郵便貯金通帳を偽造・行使したとして、公文書偽造罪(刑法155条1項)および偽造公文書行使罪(同158条1項)で起訴された。弁護人は、郵便貯金通帳は私法上の契約に基づくものであり私文書にあたると主張した。また、原審の量刑が重すぎるとして、憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に該当すると主張して上告した。
あてはめ
1. 刑法155条1項は「公務所又ハ公務員ノ作ル可キ文書」と規定しており、作成の根拠が公法関係か私法関係かを限定していない。貯金局名義で発行される郵便貯金通帳は公務所が作成する文書であるから、公文書に該当すると解される。2. 量刑については、事実審の裁判官が法律の許す範囲内で判断したものである。被告人から見て過重に感じられたとしても、それが直ちに人道上残酷な苦痛を強いる刑罰(残虐な刑罰)と評価されるものではない。
結論
1. 郵便貯金通帳は公文書に該当する。2. 本件の量刑は憲法36条に違反しない。したがって、原判決の擬律および量刑に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
公文書の意義について、事務の法的性質(私経済的行為か否か)にかかわらず「作成主体」に着目して判別する実務の確立した立場を示す。また、残虐な刑罰の定義と量刑不当の憲法問題化を否定する判断枠組みとして、刑事訴訟法上の上告理由(量刑不当)と憲法違反を区別する際に用いる。
事件番号: 昭和27(あ)1535 / 裁判年月日: 昭和27年10月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が法律の定める刑の範囲内で量刑を行った場合、たとえ被告人にとって過重であったとしても、直ちに憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、原判決の量刑が過重であることを理由に、これが憲法36条に違反する残虐な刑罰に当たる旨を主張して上告した。判決文からは、具体…
事件番号: 昭和24(れ)1603 / 裁判年月日: 昭和24年11月17日 / 結論: 棄却
所論「家庭用主食購入通帳」は、一個人の所有權の容体となるべき有体物であるから、刑條にいわゆる財物にあたるものといわなければならない。從つて該通帳が本件被告人の配給物資を騙取せんがための手段であり、道具であるに過ぎなかつたとしても、詐欺罪の成立を妨げる理由はない。されば原審が被告人の所爲に對し食糧緊急措置令第一〇又は刑法…
事件番号: 昭和31(あ)17 / 裁判年月日: 昭和31年7月5日 / 結論: 棄却
A法務社岸和田支局またはB地方法務新聞宇治山田支局各名義の各船舶登記証書を作成した場合においても、A法務社岸和田支局なる印の「社」およびB地方法務新聞宇治山田支局之印なる印の「新聞」という各文字の処を殊更に不鮮明に押捺し、各その形式外観によつて、一般人をしてA法務局岸和田支局またはB地方法務局宇治山田支局が権限により作…
事件番号: 昭和25(れ)1375 / 裁判年月日: 昭和26年4月27日 / 結論: 破棄自判
一 経済関係罰則の整備に関する法律第一条の規定と対比して見ると、同条は別表甲号に掲げる経済団体の「役員其ノ他ノ職員ハ罰則ノ適用ニ付テハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ従事スル職員ト看做ス」旨を規定しているが同第二条には、かかる規定は存在しない。すなわち、以上各規定の趣旨からみれば、右別表甲号、乙号掲記の経済団体の職員はいずれも本来…