一 他人のために外食券や主食の交付若しくは配給を受ける正當な權限がないのに右のような手段方法により相手方をしてその使用した證明書や配給通帳等が眞正に成立したものであると否とにかかわらず他人を欺罔して財物を騙取した點において刑法第二四六條第一項の詐欺罪が成立するものといわなければならない。 二 證明書や通帳等が眞正に成立したものであつたとすれば外食券や主食の交付若くは配給について何人が責任を負い損害を負擔するか等のことが問題になるであらうが、それ等のことは本件詐欺罪の成否には關係のないことである。それ故原判決が證明書や通帳等が僞造のものであるか否かを確定判示しなかつたからといつて、罪とならない事實を罪とした違法又は審理不盡若くは理由不備の違法があるとはいえない。 三 三食外食券は、勿論外食の際代金は支拂わなければならないがそれがあれば引換えに主食類を入手をすることができるもので財産權の目的になるから刑法第二四六條第一項の財物である。それ故これを騙取した所爲に對し同條第二項ではなく第一項を適用した原判決は正當である。
一 權限なき者の配給通帳等の利用による外食券等の騙取と詐欺罪 二 外食券等の騙取に利用した配給通帳等の眞僞を判示しない判決の正否 三 外食券等を騙取した行爲の擬律
刑法246條1項,刑法246條1項2項,舊刑訴法360條1項
判旨
正当な受領権限がないにもかかわらず、他人名義の証明書等を提示して、その者のために受領しに来たという虚構の事実を申し向けて主食類等を交付させた場合、詐欺罪(246条1項)が成立する。また、外食の際に代金支払を要する外食券であっても、主食類を入手できる機能を備える以上、刑法上の「財物」に該当する。
問題の所在(論点)
1. 正当な受領権限がないのに他人名義の書類を用いて財物の交付を受けた場合、詐欺罪が成立するか。また、提示した書類の真偽や損害負担者の所在は罪の成否に影響するか。 2. 使用時に代金の支払を要する「外食券」は、刑法246条1項の「財物」に該当するか(2項の利益にとどまるのではないか)。
規範
1. 詐欺罪(刑法246条1項)における欺罔行為とは、財物の交付の判断の基礎となる重要な事項について虚偽の事実を伝えることをいう。正当な受領権限の有無は、交付の是非を決定する重要な事項に該当する。 2. 刑法246条1項の「財物」とは、有体物のみならず、それ自体が財産権の目的となり、特定の物資を入手するための手段として経済的価値を有するものを含む。
重要事実
被告人は、計16回にわたり、区役所係員等に対し、他人名義の転出入証明書や主食配給通帳を提示した。その際、当該他人が外食券や主食の交付を望んでおり、自分はその者のために受領に来たという虚偽の事実を申し向けた。係員はこれを真実と誤信し、被告人に外食券や米・芋粉を交付した。なお、交付された外食券は、使用時に代金の支払が必要なものであった。
あてはめ
1. 被告人は、他人のために受領する正当な権限がないにもかかわらず、書類を提示して権限があるかのように装い、係員を誤信させている。これは交付の判断に直結する欺罔行為であり、財物の占有移転に向けられたものといえる。提示された証明書等の真偽や、最終的に誰が損害を負担するかといった点は、欺罔によって財物が交付されたという事実を左右せず、罪の成否に影響しない。 2. 本件の外食券は、代金支払を要するものの、それがあれば引換えに主食を入手できる機能を有しており、財産権の目的となる経済的価値が認められる。したがって、2項の財産上不法の利益ではなく、1項の「財物」に該当すると評価される。
結論
被告人の行為には詐欺罪(刑法246条1項)が成立する。外食券は「財物」に該当し、1項を適用した原判決は正当である。
実務上の射程
詐欺罪における「財物」の広汎性と、受領権限に関する欺罔の重要性を示した事例である。特に、行政上の配給制度下における判断ではあるが、現代においても「提示された書類が真正か」という点よりも「交付の判断に影響を及ぼす属性(権限)を偽ったか」が重視される実務上の指針となる。
事件番号: 昭和24(れ)592 / 裁判年月日: 昭和27年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が、情を知らない第三者らを使用して被害者から主食を交付させた場合、財物を得たものとして刑法246条1項の詐欺罪(1項詐欺)が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、主食の配給を受けるにあたり、証明書の提出者欄の氏名を変更して被害者を欺罔した。その際、事情を知らないAおよびその母の2名を利用し…