一 改正前の食糧管理法施行令第一〇条違反の罪の犯意ありとするには、米等等の所有者が、法定の場合を除いて、その所有する米麦につき政府又は地方食糧営団その他農林大臣の指定する者以外の者に対して売渡又はその委託をすることの認識があれば足りる。 二 右犯罪の成立には、公定価格超過、営利の目的等の存在を必要としない。
一 改正前の食糧管理法施行令第一〇条違反の罪の犯意 二 改正前の食糧管理法施行令第一〇条違反の罪と公定価格超過営利の目的等の存在の要否
食糧管理法施行令10条(昭和22年政令330號による改正前のもの),食糧管理法施行令11条ノ5(昭和22年政令330號による改正前のもの),食糧管理法施行規則22条ノ3(昭和22年農林省令103号による改正前),食糧管理法施行規則23条ノ7(昭和22年農林省令103号による改正前),食糧管理法施行規則22条ノ3(昭和22年農林省令103条によるによる改正前のもの),食糧管理法施行規則23条ノ7(昭和22年農林省令103条によるによる改正前のもの),刑法38条1項
判旨
食糧管理法違反罪における犯意の成立には、法定の除外事由がない限り、米麦の所有者が政府等指定の者以外の者に対して売渡し等を行うことの認識があれば足りる。また、公定価格超過や営利の目的の存在は、同罪の構成要件ではない。
問題の所在(論点)
食糧管理法違反罪(米麦の不法売渡し)の成立において、指定外の者への売渡しに関する認識以外に、公定価格の超過や営利の目的といった主観的要素が必要となるか、またそれらの認識が犯意の成否に影響するか。
規範
故意(犯意)の成立には、客観的構成要件に該当する事実の認識があれば足りる。本罪においては、売渡しの相手方が政府、地方食糧営団、その他農林大臣の指定する者以外の者であることの認識があれば、犯意の成立を認めるに十分である。また、特段の規定がない限り、価格の適否や営利目的の有無は犯罪の成立に影響しない。
重要事実
被告人は、米麦の所有者として、法定の除外事由がないにもかかわらず、政府や地方食糧営団、農林大臣が指定した者以外の者に対して米麦を売り渡した。被告人は売渡しの際、相手方がこれら指定の者ではないことを認識していたが、公定価格を超過する意思や営利の目的については争いがあった。
あてはめ
被告人が本件売渡しを行う際、その相手方が政府等の指定した者でないことを認識していたことは、原判決の証拠により認められる。この認識があれば、仮に被告人にそれ以外の特定の主観的意図があったとしても、犯意の成立は妨げられない。さらに、本罪は指定外の者への譲渡を規制するものであるため、売渡価格が公定価格を超過していることや、被告人に営利の目的があることは、構成要件に該当するか否かの判断において必要とされない。
結論
被告人の行為には本罪の犯意が認められ、営利目的等の不在を理由に犯罪の成立を否定することはできないため、上告を棄却する。
実務上の射程
行政刑法における故意の対象を、禁止された客観的事実の認識に限定し、動機や営利目的を不要とした事例である。答案上は、構成要件に明文のない主観的要素(営利目的等)を不要と解する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)4847 / 裁判年月日: 昭和28年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧管理法等の規制に基づき、法定の除外事由がない限り、米麦等をその生産者から買い受ける行為は、同法違反の罪を構成する。 第1 事案の概要:被告人が、法定の除外事由がないにもかかわらず、米麦等の主要食糧をその生産者から買い受けたとして、食糧管理法違反で起訴された事案。被告人側は憲法違反等を主張して上…