一 少年の身上に關する事項の調査は裁判所自からこれを爲すと少年保護司に囑託してこれを爲すことを妨ぐるものでないこと少年法第六四條第二項の規定によつて明瞭である。 二 本件においては記録中に所論小學校長作成の被告人に關する在學中の成績性行、身體状況等の調査原簿寫が存在し、なお、原審公判調書によれば本件につき原審裁判所は、直接被告人を取調べ事件の関係の外その學歴、經歴、家族關係、資産、収入等を第一審第一回公判調書並びに所論被疑者訊問調書を読聞かせて訊問したことを認め得られるから前記調査原簿寫を公判廷に顯出して被告人の意見辯解を求めず且つ右訊問調書の作成者の署名下に捺印が缺如していたとしても少年法第三一條所定の調査をしなかつたとはいえない。
一 少年法第六四條第二項の調査を裁判所自から爲すことの要否 二 少年法第三一條所定の調査をなしたと認められる一場合
少年法64條2項,少年法31條1項
判旨
少年の刑事事件における少年法所定の調査について、その限度や方法は事実裁判所の合理的な裁量に委ねられ、記録の精査や直接の取調べをもって足りる。判決に際し調査原簿を公判廷で顕出せず、あるいは被疑者訊問調書に一部不備があっても、直ちに調査義務に違反するものではない。
問題の所在(論点)
少年の刑事事件において、少年法31条(同法64条1項により準用)が定める少年の身分、経歴、素行等の調査義務に関し、裁判所が記録の精査や直接訊問を行った場合、特定の書面を公判廷で顕出せず、あるいは調書に形式的瑕疵がある場合でも調査を尽くしたといえるか。
規範
少年法64条1項に基づく同法31条の調査は、少年の刑事事件において重要であるが、その調査の限度や方法は、諸般の事情に応じ事実裁判所の適当な決定に一任される。少年の身上に関する事項は、裁判所自ら行うほか少年保護司に嘱託することも可能である。心神の状況等についても必ずしも医師の診察を要さず、裁判所による直接の取調べや、公判廷での証拠調べに代わる記録の精査をもって調査に充てることができる。
重要事実
少年被告人の刑事事件において、記録中には小学校長が作成した被告人の成績・性行・身体状況等の調査原簿の写しが存在していた。第一審の裁判所は、直接被告人を取調べ、学歴、経歴、家族関係、資産、収入等について、第一審の公判調書および被疑者訊問調書を読み聞かせて訊問を行った。しかし、当該調査原簿の写しを公判廷に顕出して被告人の意見を求めず、また使用した被疑者訊問調書の作成者の署名下に捺印が欠如していたため、弁護人は少年法所定の調査義務を尽くしていないと主張して上告した。
あてはめ
本件では記録中に小学校長作成の調査原簿写が存在しており、裁判所はこれを把握可能な状態にあった。また、原審の公判調書によれば、裁判所は被告人に対し直接の訊問を行い、学歴や家族関係等の身上事項について被疑者訊問調書等を活用して確認している。調査原簿を公判廷で顕出せず、訊問調書に捺印が欠如していたとしても、裁判所が実質的に少年の素行や経歴を把握するための措置を講じている以上、少年法31条の調査を行わなかったとはいえない。これらの調査手法の選択は裁判所の裁量権の範囲内である。
結論
本件裁判所は少年法所定の調査義務を果たしたものと認められる。したがって、調査不尽を理由とする上告は理由がない。
実務上の射程
少年の刑事手続における裁判所の調査義務の程度と裁量を画した判例である。答案上は、少年に対する保護的配慮(少年法1条、31条)の重要性を認めつつも、具体的な調査方法は裁判所の広範な裁量に属することを論じる際に引用する。特に、全件送致主義下の刑事処分において、家庭裁判所による調査結果の活用や、裁判所自らによる記録精査・直接訊問が調査義務の履行として許容される範囲を基礎づける。
事件番号: 昭和24(れ)522 / 裁判年月日: 昭和24年9月10日 / 結論: 棄却
一 舊少年法第七一條第一項によれば裁判所が審理した結果被告人等に對し保護處分をするのが相當と認めたときは少年審判所へ事件を送付しなければならない。つまり被告人等の對して保護處分をするのが相當であるか否かは事實審の裁量に委せてあるのである。(昭和二三年(れ)第七九五號第一小法廷判決、最高裁判所判例集第二巻第一六一六頁)然…