一 窃盗犯人は窃盗行爲により賍物の上に法律上正當にこれを處分し得る權限を取得する筈がないのであるから、その財物を他に賣却するに當つても、それは唯單に賣買の形式をとるだけのこのであつて、少くとも犯人自身の立場においては、むしろ事實上の處分たるにすぎない。從つて共犯者中の一人が、賍物を賣却する場合においても、論旨の主張するように、他の共犯者から處分の承諾を得るとか、或はその委任を受けるとかする必要は、法律上毫末も存在しないのであり、又實際において單獨專斷でこれが處分をなすことも往々存在する事例なのである。されば、原審が前説示の如く判示證據にもとづいて、A單獨の處分であることを認定したからというて、この事實認定を目して法理に背き實驗則に反するものであると非難することはできない。 二 思うに、刑法第二五七條第一項の法意は、同條項所定の關係あるものの間においては、賍物に關する犯罪につき、それらのものに對して刑を科するのは情誼上苛酷に失するとしたに過ぎないのである。從つて窃盗本犯の共犯者中に、たとえ賍物罪の犯人と同條項所定の關係に立つものがいたとしても、そのものが賍物罪に關與していない場合にあつては、同條項を適用して刑を免除すべきものではない。この事は同條第二項において、親族關係のない賍物罪の共犯者に對して、前項の例を用うべきでない旨規定していることに徴しても明白なのである。
一 窃盗共犯者の一人が爲した賍物の單獨處分と實驗則 二 刑法第二五七條第一項の適用
刑法257條
判旨
盗品の売却は窃盗犯人による事実上の処分にすぎず、共犯者全員の合意や委任は不要である。また、刑法257条1項の親族間の刑の免除規定は、盗品罪の犯人と親族関係にある者が本犯の共犯者の中に存在しても、その者が盗品罪自体に関与していない限り適用されない。
問題の所在(論点)
1. 窃盗共犯者の一人が盗品を売却する際、他の共犯者による委任等の関係が盗品罪の成否に影響するか。 2. 盗品罪の犯人と親族関係にある者が「本犯の共犯者」に含まれるが、当該盗品罪の取引自体には関与していない場合、刑法257条1項(親族間の特例)が適用されるか。
規範
1. 窃盗犯人は盗品を法律上正当に処分する権限を有しないため、その売却は事実上の処分にすぎない。したがって、共犯者の一人が盗品を売却する際、他の共犯者の承諾や委任は法律上不要である。 2. 刑法257条1項の趣旨は、親族間での盗品関与について刑を科すことが情誼上過酷である点にある。そのため、本犯の共犯者の中に盗品罪の犯人と親族関係にある者がいたとしても、その親族が盗品罪の実行に関与していない場合には、同条項による刑の免除は認められない。
重要事実
被告人Bは、AがCら2名と共謀して窃取した漁業用袋網であることを知りながら、Aから1万円で買い受けた。弁護人は、窃盗の共犯者が3名である以上、Aによる売却は共犯者全員の委任に基づく代理行為とみなすべきであり、被告人と窃盗共犯者の1名(C)との間に親族関係がある場合には、刑法257条1項を適用して刑を免除すべきであると主張して上告した。
あてはめ
1. Aによる袋網の売却は単なる事実上の処分であり、他の共犯者(Cら)からの委任や承諾の有無は、被告人の盗品故買罪の成立に何ら消長を来さない。 2. 刑法257条1項は盗品罪の関与者間の情誼を考慮する規定である。本件において、被告人と親族関係にある可能性があるCは本犯(窃盗)の共犯者にすぎず、本件売買(盗品罪)自体には関与していない。したがって、同条項を適用する余地はない。
結論
本件盗品故買罪は適法に成立し、被告人と本犯共犯者の一人との間に親族関係があったとしても、刑法257条1項による刑の免除は認められない。
実務上の射程
盗品罪の親族間の特例(刑法257条1項)の適用範囲を限定的に解釈する際、および盗品処分の法的性格を論じる際の基礎となる。特に「本犯の共犯者」と親族関係があるだけでは足りず、その親族が「盗品罪の相手方(処分者等)」として直接関与している必要があることを示す。答案では、親族関係の有無を検討する前に、取引の直接の相手方が誰であるかを確定させる必要がある。
事件番号: 昭和24(れ)1797 / 裁判年月日: 昭和24年11月26日 / 結論: 棄却
窃盜犯人が盜難被疑者の直系卑屬であることは免責の事由になるだけであつて少しも窃盜罪の成立を妨げるものではないから親族相盜の場合でも賍物たるの情を知つてこれを買受ければ故買罪が成立することは疑のないところである。然らば原審が右と同一解釋の下に賍物故買罪をもつて被告人を問擬したことは正當である。