刑法第二五七条第一項は、本犯と賍物に関する犯人との間に同条項所定の関係がある場合に、賍物に関する犯人の刑を免除する旨を規定したものであり、賍物に関する犯人相互の間に右所定の関係があつてもその刑を免除すべき事由とはならない。
刑法第二五七条第一項の法意。
刑法257条1項,刑法256条
判旨
刑法257条1項による親族間の刑の免除は、本犯と盗品等罪の犯人との間に親族関係がある場合に限定され、盗品等罪の共犯者相互間に親族関係があるにすぎない場合には適用されない。
問題の所在(論点)
刑法257条1項(親族間の犯罪に関する特例)は、盗品等罪の犯人相互の間に親族関係がある場合に、本犯との間に親族関係がなくとも適用されるか。同条の「本犯と……との間」という文言の解釈が問題となる。
規範
刑法257条1項の趣旨は、本犯との間に一定の親族関係がある者が盗品に関与した場合、その親族関係に基づく情愛から犯行に及ぶ蓋然性が高く、期待可能性が減少することに鑑み刑を免除する点にある。したがって、同条の適用は、本犯と盗品等罪を犯した者との間に同条所定の親族関係がある場合に限られる。
重要事実
被告人が盗品等に関する罪(盗品等関与罪)に問われた事案において、被告人と本犯との間には親族関係は存在しなかった。一方で、盗品等罪を共に犯した共犯者相互の間には、配偶者という刑法257条1項所定の親族関係が存在していた。被告人は、共犯者との間に親族関係があることを理由に、同条による刑の免除を主張して上告した。
あてはめ
刑法257条1項は「本犯と前二条の罪を犯した者との間」に親族関係があることを要件としている。本件において、盗品等に関する罪を犯した被告人と本犯との間には親族関係が認められない。たとえ盗品等罪の共犯者(犯人相互)の間に配偶者という関係があったとしても、それは同条が規定する「本犯と犯人の関係」ではない。したがって、期待可能性を減少させるべき基礎となる本犯との情愛関係が存在しない以上、同条を適用して刑を免除する余地はない。
結論
本犯と盗品等罪の犯人との間に親族関係がない限り、盗品等罪の犯人相互の間に親族関係があっても刑法257条1項は適用されない。上告棄却。
実務上の射程
親族相盗例(244条)と同様、盗品等罪の親族間特例(257条)も、属人的な処罰阻却事由(政策的刑免除事由)である。答案上は、本犯との関係のみが基準となることを明示し、共犯者間の関係で攪乱されないよう注意する。また、本犯が親族である場合に、親族関係のない共犯者が加わった際の処理(刑法257条2項)と混同しないよう区別して論じる必要がある。
事件番号: 昭和25(あ)2036 / 裁判年月日: 昭和26年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品等に関する罪において、親族間の特例(刑法257条1項)が適用されるためには、犯人と本犯との間に親族関係があるだけではなく、犯行がその親族の指図や依頼に基づくものであることが必要とされる。 第1 事案の概要:被告人Aは、夫であるBが本犯として関与した財物について、盗品等に関する罪(賍物罪)に問わ…
事件番号: 昭和26(あ)3196 / 裁判年月日: 昭和28年3月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法257条に定める親族間の刑の免除の事由は「罪となるべき事実」には該当しない。したがって、当該事実の認定にあたり、共犯者の供述調書等について厳格な証明や補強証拠を要さず、伝聞法則の適用も排除されるとした。 第1 事案の概要:被告人Aは盗品牙保、運搬および収受の罪で、被告人Bは盗品故買の罪でそれぞ…