一 旧刑訴第一八八条第一項にあたる場合、証人は証言を拒む権利があるから、右証人に宣誓させて尋問したからといつて直ちに憲法第三八条第一項にいう自己に不利益な供述を強要したものということはできない。 二 証人が旧刑訴第一八八条第一項により証言を拒むことができるのにこれを拒まなかつた場合に、その証人が、宣誓の上虚偽の陳述をしても偽証罪は成立しない。
一 証言拒絶権ある証人を宣誓させて尋問した場合と憲法第三八条第一項 二 宣誓させないで尋問すべき証人に宣誓させた場合と偽証罪の成否
刑法169,旧刑訴法188条,旧刑訴法201条,憲法38条1項
判旨
自己に不利益な供述となるため証言拒絶権(旧刑訴法188条1項)を有する証人に対し、法律に反して宣誓をさせて訊問したとしても、その者は刑法169条にいう「法律ニ依リ宣誓シタル証人」には該当しない。
問題の所在(論点)
自己に不利益な事項について証言拒絶権を有する証人に対し、本来宣誓させてはならない法律の規定に反して宣誓させた場合、その証言について偽証罪(刑法169条)が成立するか。「法律ニ依リ宣誓シタル証人」の意義が問題となる。
規範
刑法169条の「法律ニ依リ宣誓シタル証人」とは、法律上宣誓させることができる証言事項について宣誓した証人を指す。したがって、証言拒絶権(旧刑訴法188条1項)を有する者に対し、同法201条1項(現行法155条1項参照)の規定に反して宣誓させて訊問した場合、その宣誓は偽証罪の前提となる「法律による宣誓」としての効力を有しない。
重要事実
被告人は、他人の詐欺・窃盗被告事件の証人として出廷し、宣誓の上で証言を行った。しかし、その証言内容は、真実を供述すれば被告人自身の飲食営業緊急措置令違反の罪について刑事訴追を受けるおそれがあるものであった。当時の法制下では、このような場合には証人に対し宣誓をさせてはならないとされていたが、裁判所は被告人に宣誓をさせて訊問を行い、被告人は虚偽の供述をした。
事件番号: 昭和23(れ)1541 / 裁判年月日: 昭和27年11月5日 / 結論: 棄却
一 上告申立人が旧刑訴第四二三条所定の期間内に上告趣意書を提出しなかつた場合には、原判決の認定した罪について原判決後大赦があつても、上告裁判所は、同法第四二七条に従いその上告を棄却する決定をすべきである。 二 原審で同種の犯行につき有罪判決を受け、ともに上告の申立をした共同被告人の一人が前項のように上告趣意書を提出しな…
あてはめ
被告人が証言した事項は、真実を述べれば自己が刑事訴訴を受けるおそれがある関係にあり、旧刑訴法188条1項の証言拒絶権が認められる。同法201条1項によれば、このような証言拒絶権を行使しない証人であっても、裁判所は宣誓をさせてはならない。本件では、裁判所はこの規定に違反して宣誓をさせており、被告人が行った宣誓は「法律上宣誓せしめ得る証言事項」についてのものとはいえない。旧刑訴法201条3項(宣誓した証言の証拠能力を認める規定)があるからといって、これが直ちに偽証罪の「法律による宣誓」の効力を認める根拠にはならない。
結論
被告人は「法律ニ依リ宣誓シタル証人」に該当しないため、偽証罪は成立せず、無罪とされるべきである。
実務上の射程
本判決は、証人義務と自己負罪拒否特権の調整を図るものである。答案上は、偽証罪の主体となる「法律により宣誓した証人」の解釈において、宣誓手続に重大な適法性欠如(特に証言拒絶権者への宣誓等)がある場合に、罪刑法定主義の観点から構成要件該当性を否定する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1586 / 裁判年月日: 昭和27年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証人に対し宣誓をさせなかった場合であっても、公判調書において証人が証言拒絶権を有する親族関係にあることや宣誓をさせない旨が明記されていれば、適法な手続が行われたものと推定される。また、刑法72条の加重減軽の順序等の総則規定は、判決書において適用されていることが明らかであれば、必ずしも条文を…
事件番号: 昭和24(れ)129 / 裁判年月日: 昭和24年7月9日 / 結論: 破棄自判
一 昭和二二年法律第二二五號議院における證人の宣誓及び證言等に關する法律違反の罪は、同法第八條所定の各議院若しくは委員會又は兩議院の合同審査會の告發をもつて控訴提起の條件と爲すべきものであることは、既に當裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一九五一號昭和二四年六月一日大法廷判決) 二 有毒飲食物等取締令第…
事件番号: 昭和23(れ)2118 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 破棄自判
一 所論、昭和二三年當裁判所規則第九號(同年當裁判所規則第三五號を以つて一部改正以前の當初規定)の規定中、上告審のみに適用あるい第四條の規定を除けば、すべて從來裁判所又は裁判長の裁量に委せられた事項につきただその裁量の範圍に制限を加えた規定をなしたに過ぎないものであつて、如何なる見地からするも違憲などというべきものでは…