一 上告申立人が旧刑訴第四二三条所定の期間内に上告趣意書を提出しなかつた場合には、原判決の認定した罪について原判決後大赦があつても、上告裁判所は、同法第四二七条に従いその上告を棄却する決定をすべきである。 二 原審で同種の犯行につき有罪判決を受け、ともに上告の申立をした共同被告人の一人が前項のように上告趣意書を提出しなかつたときは、他の上告申立人については原判決後に大赦があつたことを理由として原判決を破棄すべき場合でも、右上告趣意書を提出しなかつた上告申立人に対しては原判決を破棄すべきではない。
一 原判決後に大赦があつたときと上告趣意書の不提出 二 上告を申し立てた共同被告人にともに原判決後大赦があつた場合と上告趣意書を提出しなかつた共同被告人の一人に対する裁判
旧刑訴法415条,旧刑訴法423条,旧刑訴法427条,旧刑訴法434条,旧刑訴法451条,昭和27年政令117号大赦令
判旨
自己の刑事追追を受ける虞がある証人が行った虚偽の陳述について、裁判所が宣誓をさせてはならない関係にある場合には、刑法169条の「法律により宣誓した証人」に該当せず、偽証罪は成立しない。また、共同被告人の一人の上告理由が他の共同被告人にも共通する場合、上告趣意書を提出していない被告人に対してもその効力が及ぶ。
問題の所在(論点)
1. 自己が刑事訴追を受けるおそれがある者が行った虚偽の陳述について、刑法169条の偽証罪が成立するか(「法律により宣誓した」といえるか)。 2. 共同被告人の一人が提出した上告趣意書に基づく破棄理由が、趣意書を提出していない他の共同被告人にも及ぶか(旧刑訴法451条の「共通」の意義)。
規範
刑法169条にいう「法律により宣誓した証人」とは、適法な宣誓手続を経て証言する義務を負う者を指す。自己が刑事訴追を受けるおそれがある事項について証言を求められた際、裁判所が宣誓をさせてはならない関係(証言拒絶権の告知等の手続的保障が潜脱される状態)にある場合には、その宣誓は有効なものとは認められず、虚偽の陳述をしても同条の偽証罪は成立しない。
事件番号: 昭和23(れ)1541 / 裁判年月日: 昭和27年11月5日 / 結論: その他
一 旧刑訴第一八八条第一項にあたる場合、証人は証言を拒む権利があるから、右証人に宣誓させて尋問したからといつて直ちに憲法第三八条第一項にいう自己に不利益な供述を強要したものということはできない。 二 証人が旧刑訴第一八八条第一項により証言を拒むことができるのにこれを拒まなかつた場合に、その証人が、宣誓の上虚偽の陳述をし…
重要事実
被告人AおよびCは、飲食営業緊急措置令違反の罪に問われていた。両名は別の刑事事件の証人として召喚され、宣誓の上で「酒や料理を出していない」と虚偽の陳述をしたとして偽証罪でも起訴された。被告人Aは適法に上告趣意書を提出したが、共同被告人Cは期限内に提出していなかった。なお、Aの証言内容は、真実を述べれば自己の飲食営業緊急措置令違反を認めることになる関係にあった。
あてはめ
1. 被告人らが証言した内容は、自らの飲食営業緊急措置令違反という犯罪事実に直結するものであった。このような場合、真実を供述すれば自己が刑事訴追を受ける関係にあるため、裁判所は宣誓をさせてはならない関係にある。したがって、なされた宣誓は「法律による宣誓」としての効力を有さず、偽証罪の構成要件を欠く。 2. 共同被告人Aに対する無罪(偽証)および免訴(大赦による)の理由は、全く同一の法的状況にある共同被告人Cに対しても共通する。したがって、Cが上告趣意書を提出していないとしても、Aの上告による破棄の効力はCにも及ぶと解される。
結論
被告人Aについては、偽証につき無罪、営業違反につき免訴。被告人Cについても、共通の理由により原判決を破棄し、同様に無罪および免訴を言い渡すべきである。
実務上の射程
刑事訴訟法上の証言拒絶権(146条)と偽証罪の成否に関する重要判例である。証言拒絶権があるにもかかわらず宣誓・証言させた場合の「宣誓の無効」を導く論理として、答案では刑法169条の構成要件解釈(期待可能性の議論に近いが、判例は宣誓の効力に焦点を当てる)として活用する。また、共同被告人間の利益援用(現行刑訴法401条参照)の場面でも参照し得る。
事件番号: 昭和27(あ)1976 / 裁判年月日: 昭和28年10月19日 / 結論: 棄却
一 被告人自体に黙祕権があるからといつて、他人に虚偽の陳述をするように教唆したときは、偽証教唆罪が成立する。 二 刑法第一〇四条にいわゆる証憑の偽造とは、証拠自体の偽造を指称し、証人の偽証を包含しないと解すべきである。 三 証人が刑訴第一四六条の証言拒否権を有したとしても、宣誓の上虚偽の陳述をしたときは偽証罪が成立する…
事件番号: 昭和24(れ)129 / 裁判年月日: 昭和24年7月9日 / 結論: 破棄自判
一 昭和二二年法律第二二五號議院における證人の宣誓及び證言等に關する法律違反の罪は、同法第八條所定の各議院若しくは委員會又は兩議院の合同審査會の告發をもつて控訴提起の條件と爲すべきものであることは、既に當裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一九五一號昭和二四年六月一日大法廷判決) 二 有毒飲食物等取締令第…