勾留の執行停止は、裁判所が職權を以てなすものであり、被告人から裁判所に對し、それを要求する權利は訴訟法上認められていないのである。從つて被告人から裁判所に對し執行停止の申請をなしても、それは唯裁判所の職權發動を促す意味を有するに過ぎないのであつて、裁判所は必ずしもその申請について裁判をなし、これを告知する訴訟法上の義務はないのである。
勾留の執行停止の申請に對する裁判の要否
舊刑訴法118條
判旨
勾留の執行停止は裁判所の職権によってなされるものであり、被告人に申請権が認められていない以上、裁判所はその申請に対して裁判を行い告知する義務を負わない。
問題の所在(論点)
被告人が行った勾留の執行停止の申請に対し、裁判所が裁判を行い、それを被告人に告知する義務を負うか、およびその不告知が憲法違反となるか。
規範
勾留の執行停止(旧刑事訴訟法下、現行法95条参照)は、裁判所が職権をもって行う事項であり、被告人から裁判所に対し、これを要求する権利は訴訟法上認められていない。したがって、被告人からの申請は裁判所の職権発動を促す意味を有するに過ぎず、裁判所は当該申請に対して必ずしも裁判を行い、これを告知すべき訴訟法上の義務を負わない。
重要事実
被告人は第一審および原審において証人尋問の申請が却下され、また原審において勾留の執行停止を申請した。これに対し原審は、執行停止の申請について「なお勾留継続の必要がある」として却下する決定をしたが、その決定が被告人に告知されたか否かは記録上不明であった。被告人は、証人尋問の申請却下や執行停止申請への対応が憲法に違反すると主張して上告した。
あてはめ
勾留の執行停止は、個別の権利に基づく申請ではなく裁判所の裁量的職権に委ねられている。本件では、被告人が原審に執行停止の申請を行い、裁判所が職権発動の要否を検討した結果、勾留継続の必要があるとして却下決定をしている。たとえその決定が被告人に告知されていなかったとしても、被告人に適法な申請権(裁判を求める権利)自体が存在しない以上、手続上の権利侵害や憲法違反は生じないといえる。
結論
被告人に勾留の執行停止を要求する訴訟法上の権利は認められないため、裁判所に告知義務はなく、本件の対応に憲法違反の違法はない。
実務上の射程
勾留の執行停止や保釈(準抗告等の不服申立てが認められない職権事項)に関する裁判所の義務の範囲を画定する際に参照される。被告人の申立てが「権利としての申請」か「職権発動を促す申出」かを区別する議論の基礎となる。
事件番号: 昭和24新(れ)163 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 棄却
本件公訴の當初において、假りに被告人が不法に逮捕勾留されたとしてもそれに對する救濟は別途の手續によるべきであつてこれをもつて上告の理由とすることのできないことについては、當裁判所のしばしば判示するところである。(昭和二二年(れ)第三三四號同二三年六月九日大法廷判決、昭和二三年(れ)第六一號、同年一一月五日大法廷判決昭和…