一 互に暴行し合う所謂喧嘩には、正當防衛の観念を容れる餘地のない場合があること、既に當裁判所の判例の示す通りである。 二 被告人は、その同伴者Aが組敷かれているのを制止しようとしたところ相手方から毆られたので、これを毆りかえして死亡するに至らしめたのである。即ち被告人は同伴者の喧嘩の渦中にまき込まれたのであつて、全般的に観ると正當防衛と言うことはできない。 三 被告人が如何なる精神状態にあつたかということは、事實認定の問題であつて、原審の専權に屬することである。
一 喧嘩と正當防衛 二 鬪爭者の一方を助けようとした場合と正當防衛 三 被告人の精神状態の認定と裁判所の自由裁量
刑法36條,刑法39條,舊刑訴法337條
判旨
互いに暴行し合う喧嘩は、全般的に観て攻撃および防御が繰り返される一団の連続的闘争行為であるため、闘争の全般から観て刑法36条の正当防衛の観念を容れる余地はない。
問題の所在(論点)
互いに暴行をやり取りする喧嘩の最中に生じた暴行について、急迫不正の侵害の存在を認め、刑法36条の正当防衛が成立するか。
規範
互いに暴行し合ういわゆる喧嘩は、闘争者双方が攻撃および防御を繰り返す一団の連続的闘争行為である。そのため、闘争のある瞬間において一方がもっぱら防御に終始し、正当防衛を行う観を呈することがあっても、闘争の全般から観て、正当防衛(刑法36条)の成立を認める余地はない。
重要事実
被告人の同伴者Aが相手方と喧嘩をして組み敷かれていたため、被告人はこれを制止しようとした。その際、相手方から殴られたため、被告人はこれを殴り返して相手を死亡させるに至った。被告人は、同伴者の喧嘩の渦中に巻き込まれた状況にあった。
あてはめ
本件において被告人は、同伴者が組み敷かれているのを制止しようとして相手方から殴られ、これに殴り返している。この一連の経緯は、同伴者の喧嘩の渦中に巻き込まれたものであり、双方の攻撃・防御が連続する一団の闘争の一部といえる。したがって、被告人が殴られた瞬間のみを捉えて防御的側面があるとしても、闘争の全般から観れば正当防衛の観念を容れる余地はない。
結論
被告人の行為は、喧嘩の一環として全般的に観るべきものであり、正当防衛は成立せず、有罪とした原判決は正当である。
実務上の射程
本判決は「喧嘩」における正当防衛の否定を端的に示したものである。司法試験答案上は、急迫不正の侵害の要件(特に侵害の急迫性や不正性)を検討する際、侵害が予期されていたり自ら招いたりした事情を総合し、一団の闘争行為と評価できる場合に正当防衛を否定する論拠として活用できる。ただし、現代の判例実務では「防衛の意思」の有無や侵害の急迫性の判断基準として精緻化されている点に留意が必要である。
事件番号: 昭和22(れ)339 / 裁判年月日: 昭和23年6月22日 / 結論: 棄却
一 刑の執行猶豫の條件に關する規定の變更は、特定の犯罪を處罰する刑の種類又は量を變更するものではないから、刑法第六條の刑の變更に當らない。 二 判決後の刑の執行猶豫の條件に關する規定の改正は上告理由とならない。 三 互に暴行し合う所謂喧嘩は、闘爭者双方が攻撃及び防禦を繰り返す一團の連續的闘爭行爲であるから、闘爭の或る瞬…