一 刑の執行猶豫の條件に關する規定の變更は、特定の犯罪を處罰する刑の種類又は量を變更するものではないから、刑法第六條の刑の變更に當らない。 二 判決後の刑の執行猶豫の條件に關する規定の改正は上告理由とならない。 三 互に暴行し合う所謂喧嘩は、闘爭者双方が攻撃及び防禦を繰り返す一團の連續的闘爭行爲であるから、闘爭の或る瞬間においては闘爭者の一方がもつばら防禦に終止し正當防衞を行うの観を呈することがあつても闘爭の全般から見てその行爲が法律秩序に反するものである限り刑法第三六條の正當防衞の観念を容れる餘地がないものと言わなければならない。
一 刑の執行猶豫の條件に關する規定の變更と刑法第六條 二 判決後の刑の執行猶豫の條件に關する規定の改正と上告理由 三 いわゆる喧嘩の場合の闘争と正當防衞の成否
刑法25條,刑法6條,刑法36條,昭和22年法律124號刑法の一部を改正する法律(刑法25條の改正規定),刑訴法415條
判旨
互いに暴行し合う喧嘩は、全般として法律秩序に反する連続的闘争行為であり、たとえその一部で防御の態様を呈しても、正当防衛の観念を容れる余地はない。また、刑の執行猶予の条件変更は刑そのものの変更ではないため、刑法6条の「刑の変更」には当たらない。
問題の所在(論点)
互いに暴行を繰り返す「喧嘩」の最中に行われた加害行為について、急迫不正の侵害の存在を認め、刑法36条の正当防衛を適用することができるか。また、執行猶予の条件規定の改正が「刑の変更」(刑法6条)に該当するか。
規範
互いに暴行し合ういわゆる喧嘩は、双方が攻撃・防御を繰り返す一団の連続的闘争行為である。闘争の全般から見てその行為が法律秩序に反するものである限り、たとえ闘争の一瞬において一方が防御に終始する局面があったとしても、刑法36条の正当防衛の観念を容れる余地はない。
重要事実
被告人3名は、相手方との衝突を予期して仕込杖や日本刀を携えて面談に臨んだ。交渉が決裂して喧嘩となり、相手方が被告人の一人に跳びかかった際、他の被告人らが「やっちまえ」と叫び、所持していた日本刀で相手方を斬りつけ、死亡させるに至った。被告人側は、相手方の攻撃に対する防衛行為であると主張して正当防衛の適用を争った。
あてはめ
本件では、被告人らは当初から衝突を予期して武器を携行しており、交渉決裂後に一団の闘争(喧嘩)に及んでいる。このような一連の連続的闘争行為は、全体として法律秩序に反する反社会的行為といえる。したがって、相手方が跳びかかってきたという一局面のみを捉えて急迫不正の侵害があるということはできず、防衛の意思も認められない。また、執行猶予は刑の執行の仕方に過ぎず、刑法10条にいう刑の種類や量の変更ではないため、刑法6条は適用されない。
結論
被告人らの行為は法律秩序に反する喧嘩の一部であり、正当防衛は成立しない。また、執行猶予規定の改正は刑の変更に当たらないため、原判決の判断に違法はない。
実務上の射程
自ら積極的に攻撃を加える意思で闘争に臨む「喧嘩」の事案において、急迫性(または防衛意思)を否定する根拠として頻繁に引用される判例である。ただし、後の判例法理では、喧嘩であっても「予期された侵害」が直ちに急迫性を否定するわけではなく、具体的状況により正当防衛の余地を残す限定的な解釈が採られている点に留意が必要である。
事件番号: 昭和23(れ)73 / 裁判年月日: 昭和23年7月7日 / 結論: 棄却
一 互に暴行し合ういわゆる喧嘩は、鬪爭者双方が攻撃及び防禦を繰り返す一團の連續的鬪爭行爲であるから、鬪爭の或る瞬間においては、鬪爭者の一方がもつぱら防禦に終止し正當防衞を行う観を呈することがあつても、鬪爭の全般からみては、刑法第三六條の正當防衞の観念を容れる餘地がない場合がある。 二 原判決はその理由において、本件のよ…