一 科刑の種類の選擇、刑の量定、ならびに刑の執行を猶豫するかどうかは事實審たる裁判所が諸般の情状を考慮した上、自由裁量をもつて決定すべきところである。 二 被告人の辯護人が、原審の指定した第一回公判期日に出廷不可能のため、その期日の變更申請をした場合、原審において諸般の事情を考慮して、之を許容しなかつたとしても、本件は刑事訴訟法第三三四條所定の事件に該當しないのであるから、之を以て所論のごとく、辯護權の行使を不當に制限したものとは言へない。 三 共同被告人の供述と刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」に該らないことは當裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第四〇九號、同年七月二二日第一小法廷判決)。 四 共同被告人の供述といへども、被告人本人の自白と相俟つて犯罪事實の全部を確認するに役立つ限り、刑訴應急措置法第一〇條第三項の「本人の自白」の補強證據となり得ることも當裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一六七號同年七月一九日大法廷判決及び昭和二二年(れ)第一八八號昭和二三年七月七日大法廷判決參照) 五 假りに所論の如く被告人等が公判廷において前記の各聽取書の記載と異る供述をなし、右聽取書における供述を取消したとしても、裁判所は刑事訴訟法応第三四〇條による證據調をした上、諸般の資料に照らし右聽取書の記載の方が眞實に合するとの心證を得たときは、これを證據に採るも差支へなし。 六 裁判所が選舉法違反の事實を認定して、被告人に有罪の判決を言渡すにあたり、選舉權被選舉權を停止しないという宣告をするかしないかは一に事實審裁判所の自由裁量に委されたところである。かりに所論のような事情がありとしても、原審が被告人等に對し選舉權、被選舉權を停止しないとの宣告をしなかつたことをもつて、實驗則に反するものとすることはできない。
一 刑の種類の選擇刑の量定、刑の執行猶豫の言渡と事實審裁判所の自由裁量權 二 辯護人より出廷不能のため期日變更の申請があつたに拘わらず之を許容しなかつた場合と辯護權の不當制限 三 共同被告人の供述と刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」 四 共同被告人の供述による被告人本人の自白の補強 五 被告人が公判廷において聽取書中の供述を取消した場合と採證の自由 六 選舉法違反につき有罪判決を言渡すにあたり選舉權被選舉權を停止しないとの宣言をなすことの當否
刑法25條,刑訴應急措置法13條2項,刑訴應急措置法10條3項,刑訴法334條,刑訴法337條,衆議院議員選舉法137條3項
判旨
共同被告人の供述は被告人本人の自白には当たらないが、被告人本人の自白と相まって犯罪事実を確認する限り、自白の補強証拠となり得る。また、弁護人の公判期日変更申請が却下された場合でも、その後の公判で弁護権行使の機会が十分に確保されていれば、弁護権の不当な制限には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 共同被告人の供述が、自白の補強証拠(刑事訴訟応急措置法10条3項)となり得るか。 2. 弁護人が欠席した第1回公判期日の変更を認めなかったことが、弁護権の不当な制限として違憲・違法となるか。
事件番号: 昭和25(あ)2963 / 裁判年月日: 昭和25年10月18日 / 結論: 棄却
一 そして法令違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるか否かは、裁判所が諸般の点を考慮して決すべき問題である。されば、原判決が所論に摘示のごとく第一審判決には証拠能力を欠く所論供述調書の記載を証拠とした違法の存することを認めながら、その挙示する他の証拠を検討しても判決に影響を及ぼさないものと判示したことは当裁判所にお…
規範
1. 憲法38条3項及び刑事訴訟応急措置法10条3項にいう「本人の自白」には、共同被告人の供述は含まれない。しかし、共同被告人の供述は、被告人本人の自白と相まって犯罪事実を認めるに足りる限り、補強証拠となり得る。 2. 公判期日の指定および変更は裁判所の裁量に属する。弁護人の欠席により防御権が制限された疑いがある場合でも、続行期日において弁護人に証拠調べの再開請求等の弁護権行使の機会が実質的に与えられていたのであれば、手続は適法である。
重要事実
被告人Aの弁護人深井は、他事件の公判期日の重複を理由に本件第1回公判期日の変更を申請したが、原審はこれを認めず弁護人不在のまま被告人訊問および証拠調べを終了した。しかし、原審は第2回公判期日を指定し、そこには弁護人も出席した。弁護人は第2回公判で証拠調べの再開などを請求せず、そのまま弁論を行った。また、被告人B・C・Dの犯罪事実認定にあたり、原審は被告人本人の自白以外に、共同被告人の供述(検事聴取書および公判供述)を総合して事実を認定した。
あてはめ
1. 共同被告人の供述は「本人の自白」ではないが、本人の自白と補完し合う関係にあれば補強証拠として機能する。本件では、被告人Bの自白や共同被告人E・Fの供述が互いに相まって犯罪事実を確認するに十分な証明力を有しているため、自白のみによる断罪には当たらない。 2. 裁判所は期日指定において弁護人の支障に配慮すべきであるが、必ずしも期日変更や審理分離を強制されるものではない。本件では、第2回公判において弁護人深井が出頭しており、第1回公判での不尽な点について補充訊問や証拠調べの再開を請求する機会があった。それにもかかわらず請求がなされなかった以上、弁護権が不当に抑圧されたとはいえない。
結論
1. 共同被告人の供述を補強証拠として犯罪事実を認定することは適法である。 2. 本件の期日変更却下および弁護人不在での手続進行は、その後の救済機会があった以上、弁護権の不当な制限には当たらない。
実務上の射程
自白の補強証拠の範囲(共同被告人の供述の活用)および、弁護人不在時の公判手続の有効性を判断する際の基準となる。特に弁護権侵害の主張に対しては、その後の期日における「手続的な治癒」の有無を検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和25(あ)497 / 裁判年月日: 昭和25年7月7日 / 結論: 棄却
被告人の自白の外に相被告人の供述を補張證據とした場合には憲法第三八條第三項に違反しないことは既に當裁判所屡次の判例(昭和二二年(れ)第一一八號同二三年七月七日大法廷判決、昭和二三年(れ)第一一二號同年七月一四日大法廷判決等)とするところであつて、今これを變更するの必要を認めないのみならず刑訴法第三一九條第二項の解釋にお…
事件番号: 昭和25(あ)2673 / 裁判年月日: 昭和26年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項及び刑訴法319条2項にいう「自白」とは、犯罪事実の全部を認める場合に限られず、客観的な犯罪構成要件に該当する事実の一部であっても、自白のみを唯一の証拠として有罪とすることはできない。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、それぞれ有罪の判決を受けた。第一審判決は、両被告人の自白を証拠…