一 強盗の行爲について共謀のあつた以上、共犯者の傷人の結果について、被告人もまた共犯の責任を免れないことは當然である。 二 傷害罪において、傷害の結果を判示するに全治に要した日數を記載するのは、大體における傷害の程度をあらわすために過ぎないのであるから、その全治日數に、所論のような、判示と證據との間に五日の差異があつたとしても、大體の程度の表示としては、かわりはないのであつて、これを以て虚無の證據による認定であるという論旨は理由がない。 三 公判調書中「七首」とある二字を削除して「花切出」の三字を挿入した場合、上欄に「三字挿入二字削除」とすべきを「二字訂正」としたとしても、これがために公判調書全體の無効を來すものではない。
一 強盗の共犯と傷人の結果についての責任 二 傷害の程度の判示と證據との不一致 三 挿入削除の字數の誤記と公判調書の効力
刑法240條,刑法60條,刑法204條,刑訴法410條19號後段,刑訴法72條
判旨
強盗の共謀がある場合、実行行為者の一人が生じさせた傷害の結果についても、他の共犯者は共謀共同正犯としての責任を負う。また、傷害罪における全治日数の判示と証拠との僅かな齟齬は、事実認定の違法とはならない。
問題の所在(論点)
1.強盗の共謀がある場合、共犯者が行った傷害行為の結果についてまで他の共犯者は責任を負うか(強盗傷人罪の共犯の成否)。2.判決書に記載された傷害の全治日数と証拠との間に数日の差異がある場合、事実認定に違法があるといえるか。
規範
1.強盗を共謀した以上、共犯者の一人がその実行に際して行った傷害行為により生じた結果について、他の共犯者も共犯としての責任(刑法240条前段)を免れない。2.傷害罪の判決において全治日数を記載するのは、傷害の程度の概略を示すためのものであり、証拠上の日数と判示日数に僅かな差異があっても、直ちに事実認定の違法(虚無の証拠による認定)とはならない。
重要事実
被告人、B、Eの3名は、他人を脅迫して金品を強奪しようと共謀した。実行時、Bが被害者Gに拳銃を突き付けて脅迫したが、柔道の有段者であるGに投げ飛ばされた。その際、共犯者Eが後方から持っていた刃物(匕首または花切出)でGの臀部を突き刺し、全治約1ヶ月の傷害を負わせた。原審は被告人について強盗傷人罪の共犯を認めたが、被告人側は、共謀は突発的な傷害にすぎないこと、証拠上の全治日数(1ヶ月5日)と判示(1ヶ月)に齟齬があること等を理由に上告した。
あてはめ
1.原判決が引用した証人Gの供述や検事聴取書によれば、B・Eと被告人との間に強盗の共謀があったことが認められる。強盗の共謀に基づき実行が行われた以上、その過程でEが被害者に負わせた傷害の結果について、被告人が共犯責任を負うことは当然である。2.全治日数の差異について、証拠上は「1ヶ月5日」であったのに対し、判決では「1ヶ月」とされていた。しかし、傷害の程度を概括的に示す目的からすれば、5日程度の差異は「大体の程度の表示」として許容範囲内であり、虚無の証拠による認定にはあたらない。
結論
被告人は強盗傷人罪の共犯としての責任を負い、全治日数の僅かな認定の差異は判決に影響を及ぼさない。上告棄却。
実務上の射程
強盗傷人罪における「共謀」の射程を示す。強盗を共謀していれば、死傷の結果を意図していなくとも240条の結果的加重犯としての責任を負うという確立した実務慣行を確認するもの。また、全治日数の認定の厳密性に関する実務上の許容範囲を示している。
事件番号: 昭和22(れ)3 / 裁判年月日: 昭和22年11月5日 / 結論: 棄却
一 所論は畢竟原判決の事實の認定を非難する趣意に歸するからこのような所論は刑訴應急措置法第一三條第二項の規定により、適法な上告の理由ということができない。 二 およそ強盜の共犯者中の一人の施用した財物奪取の手段としての暴行の結果、被害者に傷害を生ぜしめたときは、その共犯者の全員につき強盜傷人罪は成立するのであつて、この…
事件番号: 昭和24(れ)8 / 裁判年月日: 昭和24年6月4日 / 結論: 棄却
刑法第二四〇條前段の強盜傷人罪はいわゆる結果犯であるから、強盜の共犯者の一部の者が暴行したため傷害の結果を發生せしめた場合は強盜を共謀した者の全員が強盜傷人罪の責任を免れないことは屡々當裁判所の判例とするところである。