勾留状なくして被告人を警察に留置した違法があつたとしてもそれが爲爾後の手續がすべて違法になるものではない。
警察官による不法拘禁とその手續の合法性
憲法33條,憲法34條
判旨
取調の当初に憲法違反があったとしても、そのことのみから当然に爾後一切の手続が違法となるわけではなく、当該違法な手続によって得られた証拠が判決の基礎とされていない場合には、原判決に違法はない。
問題の所在(論点)
取調過程における憲法違反の存否が、その後の刑事手続全体の適法性および判決の効力にどのような影響を及ぼすか。特に、違法に収集された疑いのある証拠を判決の基礎としていない場合であっても、原判決は違法となるか。
規範
刑事手続の過程において一部に憲法違反の取調べがあったとしても、その事実のみで当然にその後の全手続が違法となるものではない。また、証拠排除の観点からは、問題となる違法な手続によって作成された証拠が判決の基礎(証拠)とされていないのであれば、原判決に法令違背の違法は認められない。加えて、刑の執行猶予の可否は事実裁判所の自由裁量に属する。
重要事実
被告人に対する取調べの当初において、憲法違反と主張されるような不法な態様による取調べが行われた。しかし、原審(事実審)においては、弁護人が不法であると主張する司法警察官聴取書などを証拠として採用しておらず、これらを判決の基礎としていなかった。被告人側は、取調当初の違法が爾後の一切の手続を違法にするものであると主張して上告した。
あてはめ
本件では、取調の当初に仮に憲法違反の事実があったとしても、その後の手続が直ちにすべて違法となるものではない。原審は、弁護人が不法と指摘する司法警察官聴取書などを証拠として用いておらず、原判決の基礎となった取調べについて他に具体的な法令違背の事実は見当たらない。したがって、判決の根拠となる証拠収集過程に直接の違法が波及しているとはいえず、手続全体を無効とするほどの違法は認められない。
結論
本件上告を棄却する。先行する取調べに違法があったとしても、それが判決の基礎となる証拠に影響しておらず、かつ手続全体を当然に違法とするものでない以上、原判決に違法はない。
実務上の射程
違法収集証拠排除法則の黎明期における判断であり、先行手続の違法が後続手続や判決に及ぼす影響(違法の承継)を限定的に捉えている。答案上は、違法収集証拠の証拠能力が問題となる場面で、先行する違法と証拠との関連性や、手続全体の適正を欠くに至っているかを検討する際の否定的な論拠として参照し得る。また、執行猶予が裁量事項であることを示す際にも活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)393 / 裁判年月日: 昭和28年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】身許調書の証拠調べ手続において、原判決の認定に照らし判決に影響を及ぼすべき明らかな違法が認められない限り、上告理由とはならない。また、当該手続が憲法31条に違反するという主張も、実質が訴訟法違反にすぎない場合は適法な上告理由を構成しない。 第1 事案の概要:被告人の身許調書について証拠調べが行われ…