憲法第三七條第一項にいう「公平な裁判所の裁判」とは組織構成等において不公平な虞なき裁判所の裁判という意味である(昭和二三年五月五日言渡同年(れ)第一七一號事件大法廷判決参照)所論刑事訴訟法の應急的措置に關する法律第一三條第二項によつて國民が右の如き裁判所の裁判を受ける權利を害されるわけはないから、右法條が憲法第三七條第一項に違反するという主張は當らない。其の他右法律第一三條が違憲のものであるとなすべき理由は見出されない(昭和二三年三月一〇日言渡同二二年(れ)第四三號事件大法廷判決参照)
憲法第三七條第一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」の意義と刑訴應急措置法第一三條第二項の合憲性
刑訴應急措置法13條2項,憲法37條1項
判旨
憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、裁判所の組織および構成において不公平の疑いがない裁判所を意味する。刑事訴訟法の応急的措置に関する法律13条2項に基づき、控訴院の判決に対する上告を最高裁判所が受理・審判する仕組みは、右の権利を害するものではなく合憲である。
問題の所在(論点)
刑事被告人の憲法37条1項に基づく「公平な裁判所の裁判を受ける権利」の意義、および応急措置法13条2項が同条項に違反するか否かが問題となった。
規範
憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、裁判所の組織構成等において不公平の惧れがない裁判所による裁判を意味する。すなわち、制度的・組織的な観点から裁判所の不偏不党性が確保されていることを指すものである。
重要事実
本件は、刑事被告人が、刑事訴訟法の応急的措置に関する法律(以下「応急措置法」)13条2項の規定が憲法37条1項に違反すると主張して上告した事案である。応急措置法13条は、旧刑事訴訟法下で控訴院がした判決に対する上告について、最高裁判所が受理・審理することを定めていたが、被告人はこの手続が公平な裁判を受ける権利を侵害すると主張した。
あてはめ
最高裁判所は、憲法37条1項の「公平な裁判所」の意義について、個別の裁判官の主観的偏見の有無ではなく、裁判所の「組織構成等において不公平の惧なき」という客観的・制度的な不偏不党性を指すと定義した。この基準に照らせば、応急措置法13条2項に基づき、新憲法下の最高裁判所が旧法下の控訴院判決を審査する仕組み自体に、組織構成上の不公平が生じる具体的な恐れは認められない。したがって、同条項によって国民が公平な裁判を受ける権利を害されるとは認められないと解される。
結論
憲法37条1項にいう公平な裁判所とは、組織構成等において不公平の恐れがない裁判所を意味し、応急措置法13条2項は同条項に違反しない。
実務上の射程
「公平な裁判所」の定義を組織・構成上の客観的公正性に求めたリーディングケースである。司法試験においては、裁判官の除斥・忌避・回避制度の趣旨を説明する際や、裁判員の選任手続、さらには特別裁判所の禁止(憲法76条2項)と関連付けて「公平な裁判所」の意義を論じる際の論拠として使用される。
事件番号: 昭和23(れ)1719 / 裁判年月日: 昭和24年4月23日 / 結論: 棄却
一 所論刑訴應急措置法第一三條第二項は量刑不當或は事實誤認は上告理由として之を主張することを許さない趣旨を規定したものである。而して右條項は憲法に違反するものでないことは既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(れ)第二九〇號同二三年六月三〇日大法廷判決。昭和二二年(れ)第四三号、同二三年三月一〇日大法廷判決…