一 普通地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約は、地方自治法施行令一六七条の二第一項の掲げる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法によることが許されないことを知り又は知り得べかりし場合など当該契約を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効となる。 二 普通地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約が無効といえない場合には、地方自治法二四二条の二第一項一号に基づいて右契約の履行行為の差止めを請求することはできない。
一 普通地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約の効力 二 普通地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約の履行行為と地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく差止請求の可否
地方自治法2条16項,地方自治法234条1項,地方自治法234条2項,地方自治法242条の2第1項1号,地方自治法施行令167条の2第1項
判旨
普通地方公共団体が締結した随意契約が法令に違反する場合であっても、私法上当然に無効となるものではなく、特段の事情がない限り有効である。そのため、当該契約が私法上有効である以上、その債務の履行としての公金支出や登記手続等の差止めを求める住民訴訟は認められない。
問題の所在(論点)
随意契約の制限に違反する契約の私法上の効力と、当該契約に基づく義務の履行(登記手続等)を差し止める住民訴訟の可否が問題となる。
規範
随意契約の制限に関する法令(地方自治法234条2項、同施行令167条の2第1項)に違反して締結された契約は、それだけで当然に私法上無効とはならない。①法令掲記の事由に当たらないことが何人の目にも明らかである場合や、②相手方が随意契約の方法による締結が許されないことを知り、または知り得べきであった場合など、効力を無効としなければ法令の趣旨を没却する結果となる「特段の事情」がある場合に限り、私法上無効となる。契約が私法上有効である以上、その債務の履行行為は違法とはならず、住民訴訟による差止めは許されない。
事件番号: 昭和42(行ツ)1 / 裁判年月日: 昭和43年9月6日 / 結論: 棄却
一、買収農地の売渡を受けて農業用施設として占有している者は、その売渡処分が当然無効であつても、特段の事情のないかぎり、その占有の始めに善意・無過失というべきである。 二、民法第一六二条の適用には、他人の所有に属することを必要としない。
重要事実
大阪府内の町が、共有林地の一部(本件土地)を、地上権者との売却交渉が不調に終わった後に、第三者Eに対し随意契約の方法で売却した(本件売買契約)。住民らは、本件売買契約が地方自治法施行令の定める随意契約の要件(167条の2第1項3号・4号)を欠き違法であるとして、住民訴訟に基づき、所有権移転登記手続の差止めを求めた。
あてはめ
本件売買契約が仮に随意契約の要件を欠き違法であったとしても、売却価格は議会関係議員らの協議に基づく見積価格(300万円)通りであり、不当に廉価とはいえない。また、町長が当初の地上権者との交渉に苦慮した末にEの申込みに応じたという経緯に照らせば、随意契約が許されないことが何人の目にも明らかであったとはいえず、相手方Eにおいて無効であることを知り得たという特段の事情も認められない。したがって、本件売買契約は私法上有効である。
結論
本件売買契約は私法上有効であるから、その履行行為である登記手続は違法ではなく、住民による差止請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
地方公共団体の契約に関する住民訴訟(4号請求や差止請求)において、契約自体の公法上の違法性と、私法上の効力を切り離して論じる際の必須判例である。あてはめでは、相手方の善意・無過失や、価格の妥当性、契約に至る経緯の複雑さを「特段の事情」の存否に結びつけて展開する。
事件番号: 昭和40(行ツ)63 / 裁判年月日: 昭和42年4月13日 / 結論: 棄却
一 町村制のもとにおいて村が知事の許可なしに行なつた基本財産の処分行為であつても、町村制の廃止後は、地方自治法附則第一一条により、完全にその効力を生ずるにいつたと解すべきである。 二 自作農創設特別措置法第四〇条ノ二に基づく牧野の買収処分により国が所有権を取得した場合において、その所有権の取得およびその後の所有権の取得…
事件番号: 昭和37(オ)202 / 裁判年月日: 昭和39年7月7日 / 結論: 棄却
町条例に、競争入札以外の方法による町有不動産の売却が予定価格二〇万円未満のものまたは予定価格二〇万円以上五〇万円未満で急施を要するものについてなされるときには、町議会の議決を要せず、町長において町を代表して私法上の売買契約を締結できる権限がある旨規定されている場合は、同町長の右制限をこえる町有不動産売却行為について、右…
事件番号: 昭和36(オ)4 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
農地の売渡の相手方を誤つた違法があつても、売渡処分を当然無効とはいえない。
事件番号: 昭和54(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和59年11月29日 / 結論: その他
未墾地につき入植許可を受け農地法施行法一一条の規定により売渡予約書の交付を受けた者とみなされた甲が、その買受の申込をしたのち、県知事に対し、右土地の開墾に従事していたその子乙との連名で入植名義を乙に変更することの許可申請をし、これに基づいて乙への入植名義の変更が許可された場合に、それが老齢、病気等を理由とする申請につい…