農業協同組合を共済者とする養老生命共済契約の被共済者が、夜間飲酒酩酊のうえ普通乗用車の運転を開始し、事故発生時においてさえ血液一ミリリツトル中〇・九八ミリグラムのアルコールを保有しており、右アルコールの影響のもとに道路状況を無視し、かつ、制限速度毎時四〇キロメートルの屈曲した路上を前方注視義務を怠つたまま漫然時速七〇キロメートル以上の高速度で運転をして、路上右寄りに駐車中のレツカー車に衝突して死亡した場合には、右事故につき前記養老生命共済契約における災害給付金及び死亡割増特約金給付の免責事由である被共済者の「重大な過失」があるものと解すべきである。
農業協同組合を共済者とする養老生命共済契約における災害給付金及び死亡割増特約金給付の免責事由である被共済者の「重大な過失」があるとされた事例
商法641条,商法829条,農業協同組合法10条の2,農業協同組合法及び農業共同組合連合会の共済規程の記載事項を定める省令(昭和29年農林省令第62号)1項2号ハ
判旨
共済契約における給付免責事由の「重大な過失」とは、損害保険に関する商法の規定と同趣旨であり、極めて悪質重大な法令違背や無謀な操縦によって自ら事故を招致したと評価される場合を指す。
問題の所在(論点)
共済契約の災害給付金等の免責事由である「重大な過失」の意義、および著しい酒酔い運転かつ大幅な速度超過等の事情がある場合に、同条項に該当するか。
規範
保険法(旧商法)上の免責事由である「重大な過失」とは、単なる過失を超え、不注意の程度が著しく、ほとんど故意に近い状態をいう。具体的には、事故の発生を容易に予見できたにもかかわらず、著しく不注意な行為によって事故を招致した場合を指す。これは共済契約における免責規定の解釈においても同様に適用される。
重要事実
亡Dは、本件事故当夜に酒を5、6合飲んでかなり酩酊した状態で普通乗用車の運転を開始した。事故発生時においても血液1ml中0.98mgのアルコールを保有する状態であった。Dはアルコールの影響下で道路状況を無視し、制限速度40kmの屈曲した路上において、前方注視義務を怠ったまま、時速70km以上の高速度で漫然と運転を継続した。その結果、路上右寄りに駐車中のレッカー車に衝突し、事故を発生させた。
事件番号: 昭和32(オ)760 / 裁判年月日: 昭和36年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自動車運転者は、前方に同一方向に進行する自転車がある場合、進路の間隔を十分に保ち、自転車の予期せぬ挙動にも対応できるよう減速すべき注意義務を負い、また、使用者が民法715条1項但書による免責を受けるには選任及び監督の両方について相当の注意を尽くしたことを要する。 第1 事案の概要:加害者Aは、自動…
あてはめ
Dの行為は、5、6合という多量の飲酒による酩酊状態での運転開始であり、事故時も高濃度のアルコールが検出されている点において極めて悪質である。また、制限速度を30km以上超過する時速70km以上での走行、かつ屈曲した道路での前方不注視という無謀な操縦を行っている。これらの事実は、単なる不注意の域を著しく超えており、極めて悪質重大な法令違背及び無謀な操縦によって自ら事故を招致したものと評価できる。したがって、Dにはほとんど故意に近い著しい不注意が認められる。
結論
Dの行為は本件共済契約における免責事由である「重大な過失」に該当するため、給付義務は免責される。
実務上の射程
本判決は、保険法上の「重大な過失」の判断基準を具体化したものである。司法試験の答案作成においては、飲酒の程度、速度超過の幅、道路状況の無視といった客観的事実を列挙し、「極めて悪質重大な法令違背」「無謀操縦」「自ら事故を招致」といった評価語を用いてあてはめる際のモデルとして有用である。
事件番号: 昭和41(オ)16 / 裁判年月日: 昭和44年4月25日 / 結論: 棄却
保険契約者の被用者である運転手が、酒に酔つて正常な運転ができないのに自動車を運転して事故を起こした場合には、それによつて生じた損害につき、保険会社は、旧自動車保険普通保険約款第三条一号但書の規定にかかわらず、同約款四条四号により填補の責を免れると解すべきである。
事件番号: 昭和47(あ)682 / 裁判年月日: 昭和47年11月16日 / 結論: 破棄差戻
交差点を右折するため、中央線に沿つて適式な右折合図をしながら右折を始めようとする車両の運転者としては、道路交通法(昭和四六年法律第九八号による改正前のもの)三四条二項に違反して交差点手前約六米の地点から右折を開始したとしても、それが、右規定に従つた右折方法に比し、後続車との衝突の危険を一層増大させるものでない場合には、…
事件番号: 昭和54(あ)135 / 裁判年月日: 昭和54年6月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】示談の成立を量刑の情状として考慮することは、単なる情状の評価にすぎず、被告人の資力による不当な差別には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において、示談を成立させた事実がある。原判決は、この示談の成立を量刑判断における一つの情状として採用した。これに対し、弁護側は「資力があるために示談…