保険契約者の被用者である運転手が、酒に酔つて正常な運転ができないのに自動車を運転して事故を起こした場合には、それによつて生じた損害につき、保険会社は、旧自動車保険普通保険約款第三条一号但書の規定にかかわらず、同約款四条四号により填補の責を免れると解すべきである。
酩酊運転の場合保険会社は旧自動車保険普通保険約款により損害の填補を免責されるか
商法629条,商法641条,民法92条
判旨
自動車保険の免責条項である「重大な法令違反行為」による免責は、保険当事者以外の運転手の行為にも適用され、事故招致免責の例外規定によってその適用が排除されることはない。
問題の所在(論点)
自動車保険約款において、運転手の重過失による事故を免責の例外とする規定がある場合に、当該運転手による重大な法令違反(酒酔い運転等)を理由とする免責条項の適用が排除されるか、また、法令違反の主体に運転手が含まれるかが問題となる。
規範
自動車保険約款における法令違反免責条項は、危険発生の蓋然性が極めて大きく法令で運転が禁止されている重大な法令違反行為(罰則対象)があり、かつ当該違反と事故との間に因果関係がある場合に適用される。同条項は違反の主体を保険当事者に限定せず、また、被保険者の管理監督が及ばない運転手の重過失を保護する事故招致免責の例外規定(三条一号但書)とは趣旨を異にするため、運転手の法令違反であっても免責は否定されない。
重要事実
訴外Dは、酒に酔って正常な運転ができない状態であったにもかかわらず、当時の道路交通取締法に違反して自動車を運転し、本件事故を惹起した。被保険者である上告人は、運転手であるDの重過失による事故については保険金が支払われるべきである(三条一号但書の適用)と主張して、保険者である被上告人に支払いを求めた。
あてはめ
本件におけるDの酒酔い運転は、道路交通取締法により運転が禁止され罰則も設けられている重大な法令違反行為である。かかる行為は危険発生の蓋然性が極めて高い悪質なものであり、事故との因果関係も認められる。約款上の法令違反免責規定は、被保険者を保護するための事故招致免責の例外規定とは別個の趣旨(危険な法令違反の排除)に基づくものであるから、運転手の行為であっても免責の対象となる。
結論
本件事故は重大な法令違反行為により惹起されたものであるから、保険者は保険金の支払義務を負わない(免責される)。
実務上の射程
保険約款の免責条項の解釈において、各条項の趣旨(主観的過失の救済か、客観的危険の排除か)を区別して判断する枠組みを示した。特に酒酔い運転等の重大な法令違反については、運転手の主観的事情にかかわらず客観的に免責を認める実務を支持するものである。
事件番号: 昭和57(オ)154 / 裁判年月日: 昭和58年2月18日 / 結論: 破棄自判
記名被保険者の承諾を得ないで被保険自動車を転借した者が運転中に生じた自損事故は、自家用自動車保険契約中の自損事故に関する免責条項にいう「被保険自動車の使用について、正当な権利を有する者の承諾を得ないで被保険自動車を運転しているときに、その本人について生じた傷害」にあたる。