一 いわゆるファイナンス・リース契約において、リース業者がリース期間の途中でリース物件の返還を受けた場合には、その原因が利用者の債務不履行にあるときでも、リース業者は、特段の事情のない限り、右返還によつて取得した利益を清算する必要がある。 二 いわゆるファイナンス・リース契約において、リース期間の途中でリース物件の返還を受けたリース業者が返還によつて取得した利益を清算すべき場合にその対象となるのは、リース物件が返還時において有した価値と本来のリース期間の満了時において有すべき残存価値との差額であつて、返還時からリース期間の満了時までの利用価値ではない。
一 いわゆるファイナンス・リース契約においてリース業者が利用者の債務不履行を原因としてリース期間の途中でリース物件の返還を受けた場合と返還によつて取得した利益の清算の必要 二 いわゆるファイナンス・リース契約においてリース期間の途中でリース物件の返還を受けたリース業者が返還によつて取得した利益を清算すべき場合と右利益の算定基準
民法601条
判旨
ファイナンス・リース契約において、債務不履行により物件が中途返還された場合、リース業者は公平の原則に基づき、返還時の価値と期間満了時の残存価値の差額を清算する義務を負う。清算にあたっては、返還時と満了時における物件の交換価値を確定すべきであり、規定損失金等の約定額を基礎とすることは許されない。
問題の所在(論点)
ファイナンス・リース契約において、利用者の債務不履行により物件が中途返還された場合、リース業者は清算義務を負うか。また、その場合の清算金額はどのような基準で算定すべきか(残期間のリース料相当額か、あるいは物件の交換価値の差額か)。
規範
ファイナンス・リース契約の法的性質は金融的便宜の供与にある。リース業者が債務不履行を理由に物件の返還を受けた場合でも全期間のリース料債権を保持し得ることとの均衡から、特段の事情のない限り、物件返還による利益を清算すべきである。清算対象は「物件が返還時において有した価値と本来の期間満了時において有すべき残存価値との差額」であり、具体的には返還時と満了時における物件の交換価値(売却価格相当等)を確定して算定する。規定損失金や単なる残期間の利用価値を基礎とすることはできない。
事件番号: 昭和53(オ)1339 / 裁判年月日: 昭和56年4月9日 / 結論: 棄却
一 リース会社に対し会計機を売却した者が、リース契約によりリース会社から右会計機を借り受けた者に対し、直接その性能を保証し、保証した性能を欠くときは借主の受ける損害を賠償する旨の損害担保契約を結んだ場合において、右会計機が保証された性能を欠くため借主の業務に適合せず、そのため借主が売主にその引取方を要求して使用を中止し…
重要事実
上告人(リース業者)は、被上告人(利用者)との間でファイナンス・リース契約を締結したが、被上告人の債務不履行を理由にリース期間の途中で物件の返還を受けた。原審は、リース業者に清算義務があることを認めつつ、その清算額の算定にあたり、物件滅失時の約定である「規定損失金額」を基礎として、返還時から期間満了時までの年度間差額をもって清算金額(利用価値相当)とした。
あてはめ
本件リース契約の実質は金融取引であり、業者が物件返還による利益を独占することは、期間満了時と比較して過大な利益を得ることになり公平に反する。原審が清算義務を認めた点は正当である。しかし、清算対象を「返還時から満了時までの利用価値」と捉え、物件滅失時の便宜的な約定である「規定損失金額」を基礎に算定した点は誤りである。物件に特別の仕様があり処分が困難な場合でも、算定が不可能ではない以上、返還時と満了時の客観的な交換価値を確定して差額を算出するべきである。
結論
リース業者は中途返還によって取得した利益を清算する義務を負うが、その額は返還時と満了時の物件の交換価値の差額により算定すべきである。本件原審の算定手法は法令の解釈適用を誤っており、破棄を免れない。
実務上の射程
ファイナンス・リース契約の中途解約・解除に伴う損害賠償請求や不当利得返還請求において、清算条項の解釈指針となる。答案上は、リース料全額の請求が認められる反面、物件の返還を受けた場合には「交換価値の差額」を控除すべきという公平の原則を導く際に用いる。また、約定の規定損失金が公序良俗や消費者契約法等で争われる際の判断基準としても重要である。
事件番号: 平成3(オ)1495 / 裁判年月日: 平成5年11月25日 / 結論: 破棄差戻
いわゆるファイナンス・リース契約において、利用者がリース物件の引渡しを受けていないのにリース業者にこれを受領した旨の受領書を交付し、その後リース業者が販売店からその経営不振を理由にリース物件を引き揚げたなど判示の事実関係の下においては、利用者は、リース物件を使用することができなかったからといって、リース料の支払義務を免…