地方公務員である職員としての採用内定の通知がされた場合において、職員の採用は内規によつて辞令を交付することにより行うこととされ、右採用内定の通知は法令上の根拠に基づくものではないなど、判示の事実関係があるときは、右採用内定の通知は事実上の行為にすぎず、右内定の取消しは、抗告訴訟の対象となる処分にあたらない。
地方公務員としての採用内定の取消しが抗告訴訟の対象となる処分にあたらないとされた事例
地方公務員法17条1項,行政事件訴訟法3条2項
判旨
地方公務員の採用内定通知は、採用発令手続を円滑に行うための事実上の準備行為にすぎず、行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」には該当しない。
問題の所在(論点)
地方公務員の採用内定取消しは、抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分」(行政事件訴訟法3条2項)に該当するか。
規範
「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政事件訴訟法3条2項)とは、行政庁の行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。公務員の採用内定通知がこれに該当するかは、当該通知が相手方に公務員としての法的地位を取得させる確定的な意思表示であるか、あるいは任命権者に採用義務を課すものであるかによって判断される。
重要事実
上告人は、東京都の職員採用試験に合格し、建設局職員としての採用内定通知を受けた。当該通知には「4月1日付で採用することに内定した」旨が記載されていたが、東京都の内規では辞令交付により発令することとされていた。その後、採用予定日の直前になって、東京都は上告人に対し採用内定を取り消す旨の通知を行った。これに対し、上告人が内定取消しの取消訴訟を提起した事案である。
事件番号: 平成22(行ヒ)124 / 裁判年月日: 平成23年6月14日 / 結論: 破棄自判
市営の老人福祉施設の民間事業者への移管に当たり,その相手方となる事業者の選考のための公募に提案書を提出して応募した者が,市長から,その者を相手方として上記移管の手続を進めることは好ましくないと判断したので提案について決定に至らなかった旨の通知を受けた場合において,上記移管は市と相手方となる事業者との間で契約を締結するこ…
あてはめ
東京都における採用内定の通知は、法令上の根拠に基づくものではなく、早期に就職の意思を確認し事務処理上の便宜を図るための事実上の行為である。また、実際の採用は辞令交付によって行われることが予定されている。したがって、内定通知は公務員としての地位を確定的に取得させる意思表示とは認められず、知事に採用すべき法律上の義務を負わせるものでもない。ゆえに、内定取消しは内定者の法律上の地位や権利関係に直接影響を及ぼすものではない(信頼を裏切ったことによる損害賠償責任の有無は別問題である)。
結論
本件採用内定取消しは処分性を有さず、行政事件訴訟法3条2項にいう「処分」に該当しない。
実務上の射程
地方公務員の採用内定が、私企業における「始期付解約権留保付労働契約」の成立とは異なり、単なる事前の事実上の行為にとどまると判示した。答案上は、公務員の任用行為が権力的行為(行政処分)であることを前提に、内定段階では未だ「処分」に至っていないことを説明する際に活用する。ただし、信頼関係を裏切った場合の国家賠償責任については本判決も否定していない点に注意を要する。
事件番号: 昭和54(オ)580 / 裁判年月日: 昭和55年5月30日 / 結論: 棄却
一 日本電信電話公社の社員公募に応じ、試験に合格して採用の日、配置先、採用職種及び身分を具体的に明示した採用通知を受けた者が、同公社からの求めに応じて被服号型報告表を提出し、入社懇談会に出席し、健康診断を受けたなどのことがあり、他方、同公社において、採用通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることを予定し…