約束手形の受取人欄が変造された場合であつても、その手形面上変造後の受取人から現在の所持人へ順次連続した裏書の記載があるときは、右所持人は、振出人に対する関係においても手形法七七条一項一号、一六条一項により適法な所持人と推定される。
約束手形の受取人欄の変造と手形法一六条一項の適用
手形法16条1項,手形法69条,手形法77条1項
判旨
手形法16条1項の裏書の連続は、手形面上形式的に判定すれば足りるため、受取人欄が変造された場合であっても、変造後の受取人から現在の所持人まで裏書が連続していれば、所持人は適法な所持人と推定される。
問題の所在(論点)
手形法16条1項の裏書の連続による権利推定について、受取人欄が変造された手形を裏書連続の起点とすることができるか。また、所持人は裏書の連続を主張するのみで振出人に対し権利行使が可能か。
規範
手形法16条1項(77条1項1号により約束手形に準用)にいう裏書の連続は、裏書の形式によりこれを判定すれば足りる。手形法69条(77条1項7号により準用)により、変造前の署名者は原文言に従って責任を負うが、これは手形債務の内容に影響を及ぼさない法理を明らかにしたものにすぎず、手形面上に原文言が残存しているとみなす趣旨ではない。したがって、変造後の受取人を起点として裏書が形式的に連続している限り、所持人は振出人との関係においても適法な権利者として推定を受ける。
重要事実
被上告人(振出人)が受取人を「G電機商品販売株式会社」として振り出した約束手形が盗難に遭い、何者かによって受取人欄が「株式会社D物産」に変造された。その後、変造後の受取人であるD物産を第一裏書人とし、上告人に至るまで形式的に連続した裏書がなされた。上告人が振出人に対し手形金支払を求めたところ、振出人は、上告人が裏書の連続のみでは権利行使できず、正当な取得原因を主張立証すべきであると争った。
あてはめ
本件各手形には、変造後の受取人である「株式会社D物産」から上告人に至るまでの裏書の記載があり、手形面上、形式的に裏書の連続に欠けるところはない。手形法69条の規定があるからといって、原文言による連続を要求したり、裏書の連続による推定を否定したりすべきではない。したがって、上告人は手形法16条1項により適法な所持人と推定されるため、別途実質的な権利取得原因を主張立証する必要はないといえる。
結論
受取人欄が変造された場合でも、変造後の文言に基づく裏書の連続があれば所持人は適法な所持人と推定され、振出人に対し手形上の権利を行使しうる。
実務上の射程
手形変造の事案において、形式的資格の付与(16条1項)と変造者の責任範囲(69条)を峻別する。答案上は、変造があっても「形式的連続」さえあれば立証責任が転換され、相手方が悪意・重過失(16条2項)または抗弁を立証しない限り請求が認められるという構成で用いる。
事件番号: 昭和33(オ)608 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】手形法16条1項にいう裏書の連続は、手形の形式的記載から客観的に判断されるべきであり、裏書人が実在しない架空の名称であっても、形式的な連続が認められる限り裏書の連続は肯定される。 第1 事案の概要:本件における約束手形には、受取人と第一裏書人として、いずれも同一の名称である「D株式会社」が記載され…