交通事故による損害賠償債権を有する者がその債権を保全するため民法四二三条一項本文により債務者の有する自動車対人賠償責任保険の保険金請求権を行使するには、債務者の資力が債権を弁済するについて十分でないことを要する。
交通事故による損害賠償債権を有する者が債権者代位権により債務者の有する自動車対人賠償責任保険の保険金請求権を行使するための要件
民法423条1項
判旨
金銭債権である交通事故の損害賠償債権を保全するために債権者代位権を行使するには、債務者が無資力であることを要する。
問題の所在(論点)
金銭債権である交通事故の損害賠償債権を被保全債権として、債務者の保険金請求権を代位行使する場合、民法423条1項の要件として債務者の無資力が必要か。
規範
金銭債権を有する者が、民法423条1項本文に基づき債務者の有する権利を代位行使するためには、債務者の資力がその債権を弁済するについて十分でないこと(債務者の無資力)を要する。交通事故による損害賠償債権も金銭債権である以上、同様の要件が課される。
重要事実
上告人ら(債権者)は、交通事故により債務者(D)に対して損害賠償債権を有していた。上告人らは、当該債権を保全するため、債務者が有する自動車対人賠償責任保険の保険金請求権を代位行使しようとした。しかし、原審において、債務者Dは上告人らの損害賠償債権を弁済するのに十分な資力を有していると認定された。
事件番号: 昭和39(オ)740 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
金銭債権を有する者は、債務者の資力が当該債権を弁済するについて十分でない場合にかぎり、民法第四二三条第一項本文の規定により、当該債務者に属する権利を行使することができると解すべきである。
あてはめ
交通事故による損害賠償債権は金銭債権にほかならない。したがって、一般的な金銭債権の代位行使と同様に、債務者の資力が弁済に不足していることが要件となる。本件において、債務者Dは当該債権を弁済するに十分な資力を有していると認められるため、無資力要件を欠いているといえる。
結論
債務者が無資力ではないため、上告人らは債務者の保険金請求権を代位行使することはできない。
実務上の射程
債権者代位権の行使において、被保全債権が金銭債権である場合には、原則として債務者の無資力が必要であることを再確認したものである。特定物債権の保全や転用事例(登記請求権の代位行使等)とは異なり、損害賠償債権のような金銭債権については、厳格に無資力要件が要求されるという答案構成の指針となる。
事件番号: 昭和27(オ)1119 / 裁判年月日: 昭和29年4月8日 / 結論: 棄却
相続人数人ある場合において、相続財産中に金銭の他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解すべきである。