借家法七条に基づく賃料増額の請求がされたときは、その意思表示が賃借人に到達した日の分から増額の効果が生ずる。
借家法七条に基づく賃料増額の請求が効果を生ずる日
借家法7条
判旨
借地借家法上の賃料増額請求権の行使は形成権の行使であって、その意思表示が相手方に到達した時に賃料増額の効果が生じる。
問題の所在(論点)
借家法に基づく賃料増額請求(形成権)の行使によって、いつの時点から賃料増額の効果が発生するか。具体的には、意思表示の到達時か、あるいは別の時点か。
規範
借賃増額請求(借家法7条、現・借地借家法32条1項)は形成権の行使であり、その意思表示が民法97条1項(現・同条1項)にいう「相手方に到達した時」から、客観的に相当な額に増額された効果が生ずる。
重要事実
賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、建物部分の賃料を増額する旨の意思表示を行った。この意思表示は昭和37年7月9日に賃借人へ到達したが、増額の効果発生時期について争いが生じた。なお、増額後の賃料額は昭和37年7月9日から月額2万円、昭和38年12月1日から月額2万2000円であった。
あてはめ
被上告人による賃料増額の意思表示は、借家法上の形成権の行使である。形成権はその行使によって一方的に法律関係を変動させる性質を有するため、民法上の意思表示の効力発生時期に関する一般原則が適用される。本件において意思表示が上告人に到達したのは昭和37年7月9日であるから、同日をもって賃料増額の効力が発生したものと評価できる。
結論
賃料増額の意思表示が相手方に到達した日に増額の効果が生ずる。本件では昭和37年7月9日から増額の効果が生じたとする原審の判断は正当である。
実務上の射程
賃料増額・減額請求が形成権であることを明示したリーディングケースである。答案上は、増額等の意思表示が到達した時点から直ちに「相当な賃料」に契約が変更されることを論証する際に用いる。訴訟で額が確定した場合でも、効果は意思表示の到達時に遡及して発生するという法的構成の基礎となる。
事件番号: 昭和50(オ)1042 / 裁判年月日: 昭和52年2月22日 / 結論: その他
借家法七条による賃料増額請求がされ、増額の効力が生じたのち、更に増額を相当とする事由が生じても、新たな増額請求がされない限り、再度増額の効力を生ずるものではなく、このことは、賃料確定又は賃料支払請求訴訟が維持継続されている間に右事由が生じた場合であつても、同様である。
事件番号: 平成25(受)1649 / 裁判年月日: 平成26年9月25日 / 結論: 破棄差戻
借地借家法32条1項の規定に基づく賃料増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟の確定判決の既判力は,原告が特定の期間の賃料額について確認を求めていると認められる特段の事情のない限り,前提である賃料増減請求の効果が生じた時点の賃料額に係る判断について生ずる。 (補足意見がある。)
事件番号: 昭和47(オ)274 / 裁判年月日: 昭和49年7月22日 / 結論: 棄却
賃料増額に関する調停において増額分の支払につき履行期が定められなかつたときは、即時その履行期が到来すると解すべきである。