石灰窒素の製造炉に関する考案を完成し、実用新案の登録を受けた者が、その完成当時、石灰窒素の製造販売を業とする会社の取締役として、その技術部門担当の最高責任者の地位にあつた者であり、かつ、会社の石灰窒素の生産の向上を図るため、その製造炉の改良考案を試み、その効率を高めるよう努力すべき任務を有していたと認められる場合には、その者が会社から右考案をなすべき具体的な命令ないし指示を受けていなかつたときでも、その者が右考案を完成するに至つた行為は、その会社の役員としての任務に属するものであつたというべきであり、会社は、右実用新案につき、旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号)第二六条、旧特許法(同一〇年法律第九六号)第一四条第二項に基づく実施権を有する。
会社の技術部門担当の最高責任者のした考案について会社が実施権を有するとされた事例
旧実用新案法(大正10年法律第97号)26条,旧特許法(大正10年法律第96号)14条2項
判旨
会社の役員が、その地位に基づき製品の生産向上を図るため製造設備の改良を試み、その効率を高めるべき具体的任務を有する場合、その考案を完成させる行為は役員としての「職務」に属し、会社は法定実施権を取得する。
問題の所在(論点)
職務発明(考案)制度において、会社の役員が完成させた考案が、当該役員の「職務」に属すると評価され、会社に法定実施権が認められるための要件(旧特許法14条2項の適用範囲)。
規範
特許法35条1項(旧実用新案法26条、旧特許法14条)にいう「職務」に属するとは、従業者等がその地位に基づき、使用者の業務に関連して、特定の改良や考案を試み、その効率を高めるよう努力すべき具体的任務を有している場合を指す。これは雇用関係にある従業員のみならず、会社の役員等についても、その任務の内容に照らして同様に判断される。
重要事実
石灰窒素等の製造販売を目的とする会社(被上告人)において、技術部門担当の最高責任者という役員の地位にあったD(上告人の先代)は、昭和26年頃、石灰窒素の製造炉に関する本件考案を完成させた。当時、Dは役員としての地位に基づき、石灰窒素の生産向上を図る前提条件として、製造炉の改良を試み、その効率を高める努力をすべき具体的任務を有していた。
あてはめ
Dは技術部門の最高責任者という重要な地位にあり、単なる一般的・抽象的な管理業務にとどまらず、会社の主力製品である石灰窒素の生産向上のための製造炉改良という「具体的任務」を負っていた。このような地位および任務の内容に照らせば、Dが本件考案を完成させるに至った行為は、被上告会社の役員としての任務、すなわち「職務」の範囲内に含まれると評価できる。
結論
Dによる本件考案は役員としての職務に属するものであるから、被上告会社は本件実用新案について法定実施権(通常実施権)を有する。
実務上の射程
特許法35条の「職務発明」の要件である「職務に属する」ことの意義を、役員の具体的任務との関係で示した点に意義がある。従業員のみならず役員についても、具体的な技術的課題の解決が任務に含まれている場合には、職務発明の規定が適用されることを確認した判例として答案で活用できる。
事件番号: 昭和41(オ)1336 / 裁判年月日: 昭和42年11月9日 / 結論: 棄却
甲商店の被用者乙が、丙会社所有の自動車を運転中に事故を起こした場合において、甲商店は丙会社代表取締役の経営する同一事業目的の個人企業であつて、丙会社に従属する関係にあり、事故当時右自動車は甲商店の車庫に保管されていたが、その管理保管の権限は丙会社にあつて、乙も当時同会社の許可を受けこれを運転していた等判示のような事情が…