後見人が未成年者を代理して後見人の内縁の夫に対し未成年者所有の土地を無償譲渡する行為は、旧民法九一五条四号にいう「後見人ト被後見人トノ利益相反スル行為」にあたる。
旧民法九一五条四号にいう「後見人と被後見人トノ利益相反スル行為」にあたるとされた事例
旧民法915条4号,民法851条4号,民法860条
判旨
後見人が、その内縁の夫に対して被後見人所有の不動産を無償譲渡する行為は、特段の事情のない限り、後見人と被後見人との利益相反行為にあたる。
問題の所在(論点)
後見人が自己の内縁の夫に対して被後見人の財産を譲渡する行為が、利益相反行為(旧民法915条4号、現行民法860条・826条参照)に該当し、無権代理となるか。
規範
後見人と被後見人との利益相反行為(民法860条、826条)にあたるか否かは、行為の客観的性質から判断すべきであるが、後見人と第三者が内縁関係にあるなど相互の利害関係が共通すると解される場合には、被後見人に不利益を与え、後見人及びその内縁者に共通の利益をもたらす行為は、利益相反行為にあたると解するのが相当である。
重要事実
未成年者である被上告人の後見人Dは、上告人と内縁関係にあった。Dは被上告人の法定代理人として、昭和21年、上告人に対し被上告人所有の本件土地を無償(約3000円の負担付)で譲渡し、登記を経由した。被上告人は後に当該譲渡行為の無効を主張した。
事件番号: 昭和40(オ)252 / 裁判年月日: 昭和42年2月23日 / 結論: 棄却
甲、乙間に乙名義の所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴訟が係属する場合には、乙の債権者で当該不動産について強制競売の申立をし、強制競売開始決定を得た第三者は、民訴法第七一条の規定により、甲、乙間の右訴訟に当事者として参加することができる。
あてはめ
後見人Dと譲受人である上告人は、当時内縁の夫婦であり、特段の事情のない限り、相互の利害関係は共通しているといえる。本件土地の無償譲渡は、被後見人である被上告人に一方的な不利益を与える一方で、実質的に同一の生活圏にある上告人と後見人Dに共通の利益をもたらすものである。したがって、本件譲渡は客観的に見て後見人と被後見人の利益が相反する行為に該当する。
結論
本件譲渡行為は利益相反行為にあたるため、後見人Dは被上告人を代理する権限を有さず、本件譲渡は無権代理行為として無効である(追認のない限り被上告人に効果帰属しない)。
実務上の射程
本判決は、利益相反行為の判断について「外形的・客観的」な判断基準を維持しつつ、内縁関係という密接な身分関係がある場合には、形式的な名義人にかかわらず実質的な利害の共通性を考慮して利益相反性を肯定できることを示した。答案上は、相手方が後見人の配偶者や内縁者である場合に、利害の共通性を指摘して826条等を類推適用または直接適用する際の根拠として活用する。
事件番号: 昭和41(オ)79 / 裁判年月日: 昭和42年4月25日 / 結論: 棄却
親権者が、その経営する事業につき、第三者の援助を仰ぎたいと考えて、子の財産を右第三者に贈与する契約を締結したとしても、右は親権者の単なる内心の意図にすぎず、民法第八二六条の利益相反行為にはあたらない。
事件番号: 昭和35(オ)1086 / 裁判年月日: 昭和38年10月10日 / 結論: 棄却
被後見人の財産等を後見人が譲り受ける行為につき、後見監督人が被後見人を代理した場合または親族会の同意があつた場合でも、被後見人は、民法第八六六条による取消権を失わない。
事件番号: 昭和54(オ)549 / 裁判年月日: 昭和57年11月26日 / 結論: 破棄差戻
一 訴訟行為には民法八二五条は適用されない。 二 民法八二六条一項の規定による特別代理人の選任申立は、父母が共同で親権を行う場合においても、その一方が単独ですることができる。 三 民法八二六条一項の規定に基づいて選任された特別代理人が親権者のした未成年者所有不動産の担保提供行為を追認することは、その被担保債務について特…