譲渡禁止の特約のある債権であつても、差押債権者の善意・悪意を問わず、転付命令によつて移転することができるものであつて、これにつき、民法四六六条二項の適用はない。
譲渡禁止の特約のある債権に対する転付命令の効力
民法466条2項,民訴法600条1項,民訴法601条
判旨
譲渡禁止の特約のある債権であっても、差押債権者の善意・悪意を問わず、強制執行による差し押さえおよび転付命令によってこれを移転させることができ、民法466条2項は適用されない。
問題の所在(論点)
譲渡禁止特約のある債権に対してなされた転付命令の効力に関し、民法466条2項(現行法466条の4第1項参照)の適用または類推適用があるか。差押債権者の悪意が転付命令の効力を妨げるかが問題となる。
規範
譲渡禁止特約の付された債権であっても、差押債権者の主観(善意・悪意)を問わず、差し押さえおよび転付命令による移転は有効である。民法466条2項(現466条2項・4項参照)は譲渡という私的自治による処分を制限するものであり、強制執行という公権的介入には及ばない。私人の合意によって債権の執行可能性を奪うことは、強制執行制度の趣旨および責任財産の保全という観点から許されない。
重要事実
債権者が、債務者の有する債権を差し押さえ、転付命令を得た。しかし、当該債権には債務者と第三債務者との間で譲渡禁止の特約が付されていた。原審は、転付命令による移転にも民法466条2項が準用されるとし、転付命令を受けた債権者が特約につき悪意である場合には債権を取得できないと判断したため、債権者が上告した。
あてはめ
まず、民法466条2項の文言は「譲渡」を対象としており、強制執行による移転を当然には含まない。次に、民事執行法の規定(旧民訴法570条等)は、執行を免れ得る財産を限定的に特定しており、私人の意思表示によって債権の執行客体性を制限することを認めていない。仮に悪意の差押えを無効とすれば、債務者の総財産を担保とする一般債権者が、当事者間の特約という関知し得ない事情により不当な不利益を被ることになる。したがって、特約の存在を知っていたとしても、転付命令の効力は妨げられない。
結論
転付命令は有効であり、差押債権者の善意・悪意を問わず債権は移転する。原判決には民法466条2項の解釈適用の誤りがあるため、破棄差し戻しを免れない。
実務上の射程
本判例は、現行民法466条の4第1項(差押えの場合の特則)として明文化されている。答案上は、特約付債権の差押えが可能であることを前提としつつ、差押債権者の善意・悪意が問題となる場面で、執行制度の公定性と責任財産の把握という論理を用いて本判決の趣旨を引用すべきである。ただし、現行法下では条文指摘(466条の4第1項)を優先する。
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