割賦金弁済契約において、割賦払の約定に違反したときは債務者は債権者の請求により償還期限にかかわらず直ちに残債務全額を弁済すべき旨の約定がされた場合には、一回の不履行があつても、各割賦金債務について約定弁済期の到来ごとに順次消滅時効が進行し、債権者が特に残債務全額の弁済を求める旨の意思表示をしたときにかぎり、その時から右全額について消滅時効が進行するものと解すべきである。
いわゆる過怠約款を付した割賦払債務の消滅時効の起算点
民法166条
判旨
期限の利益喪失条項が債権者の請求を要する旨の約定(任意的期限の利益喪失条項)である場合、一回の不履行があっても、特段の意思表示がない限り各割賦金の当初の弁済期から順次消滅時効が進行する。
問題の所在(論点)
不履行時に債権者の請求を要する期限の利益喪失条項がある場合、全額の消滅時効の起算点は「不履行時」か「請求時」か。また、請求がない場合の各割賦金の時効進行はどうなるか。
規範
割賦金弁済契約において、不履行時に債務者が「債権者の請求により」残債務全額を直ちに弁済すべき旨の約定(いわゆる任意的期限の利益喪失条項)がある場合、残債務全額についての消滅時効は、債権者が残債務全額の弁済を求める旨の意思表示をした時から進行する。債権者がかかる意思表示をしない間は、各割賦金額について、当初の約定弁済期の到来ごとに順次消滅時効が進行する。
重要事実
債権者(銀行)と連帯債務者(上告人等)との間で割賦金弁済契約が締結され、「割賦金の支払を怠ったときは債権者の請求により残債務の全部を弁済する」との約定がなされた。債務者は昭和28年9月30日の第3回割賦金の支払を怠ったが、債権者が残債務全額の請求を初めて行ったのは昭和34年7月8日であった。この間、第4回割賦金の約定弁済期(昭和29年3月31日)から5年以上が経過していた。なお、本件債務は商行為によって生じた商事債務(旧商法下の5年時効)であった。
あてはめ
本件条項は「債権者の請求により」直ちに弁済する旨の約定であり、任意的期限の利益喪失条項に該当する。債権者が残債務全額の請求を行ったのは昭和34年であり、それまでは全額についての時効は進行しない。しかし、各割賦金については、当初の約定弁済期の到来ごとに時効が進行する。第4回割賦金の弁済期である昭和29年3月31日から債権者が請求した昭和34年7月8日までは5年以上が経過している。本件は商事債務であるため、5年の経過により第4回割賦金債務は時効により消滅していると解される。
結論
第4回割賦金債務は消滅時効が完成している。一方、第5回以降の割賦金については、全額請求時まで5年を経過していないため、時効は完成していない。
実務上の射程
期限の利益喪失条項が「当然に(当然喪失型)」か「請求により(請求喪失型)」かを解釈し、起算点を画定する際のリーディングケースである。答案上は、時効の起算点(民法166条1項)の論点として、条項の文言から性質を決定し、あてはめを行う。
事件番号: 昭和42(オ)285 / 裁判年月日: 昭和43年6月27日 / 結論: 棄却
旧利息制限法のもとにおいては、債務者によつて利息として任意に支払われた金員が、同法所定の利率による金額を超えている場合であつても、超過分を元本の弁済に充当すべきでないことは、当裁判所の判例(昭和二八年(オ)第二九〇号同三〇年二月二二日第三小法廷判決民集九巻二号二〇九頁、昭和三七年(オ)第八五六号同三八年七月一一日第一小…