将来金員を貸与する旨の契約が締結された場合には、その契約が履行される以前でも、その金員をもつて準消費貸借の目的とすることを約することができ、その後右金員が貸与されたとき、右準消費貸借契約は、当然に、効力を生ずる。
将来発生する金銭債務を基礎とする準消費貸借。
民法588条,民訴法186条
判旨
将来発生すべき金銭債務を目的とする準消費貸借契約(民法588条)の合意は有効であり、その後に対象となる債務が発生した時点で当該契約は当然に効力を生ずる。
問題の所在(論点)
将来発生する債務を目的として準消費貸借契約を締結することができるか(民法588条の既存債務の意義)。また、既存債務が存在しない場合の準消費貸借の効力はどうなるか。
規範
準消費貸借(民法588条)は、既存債務の存在を前提とするものであるが、将来発生すべき債務を目的として締結することも妨げられない。この場合、将来において現実に当該債務が生じたときに、その準消費貸借契約は当然に効力を発生する。また、前提となる既存債務が存在しないか、あるいは無効である場合には、新債務(準消費貸借の目的となった債務)はその有効に存在した範囲に減縮される。
重要事実
当事者間において、将来金員を貸与する場合にそれを準消費貸借の目的とする旨の合意(予約的契約)がなされた。具体的には、昭和33年2月22日に準消費貸借契約が締結され、その後に金4万円の貸与(既存債務の発生)が実行された。また、昭和34年2月2日にも既存債務を目的とする準消費貸借契約が成立したが、上告人は前提となる既存債務の存否や成立過程に瑕疵があると主張して争った。
あてはめ
本件では、将来金4万円を貸与する場合にそれを準消費貸借の目的とする旨を約しており、その後実際に当該貸与が実行されている。将来債務を対象とする合意も、現実の債務発生を条件として効力を生ずるものと解すべきであるから、貸与がなされた時点で本件準消費貸借は有効に成立したといえる。また、既存債務の一部に不存在や無効があるとの主張については、準消費貸借が既存債務を前提とする以上、有効な範囲で新債務も存続すると解されるが、本件の事実認定によれば既存債務の存在が肯認されるため、契約は有効である。
結論
将来発生すべき金員貸与債務を目的とした準消費貸借契約は有効であり、実際に貸与がなされた時点で効力を生じる。既存債務が有効に存在する範囲において、準消費貸借に基づく請求は認められる。
実務上の射程
将来債務を目的とする準消費貸借の有効性を明言した点に意義がある。司法試験等の答案上では、準消費貸借の成立要件(既存債務の存在)を論ずる際、必ずしも契約時点で現に債務が存在している必要はなく、後の発生を条件とした予約的な合意も可能である旨を論述する際の根拠となる。
事件番号: 昭和38(オ)70 / 裁判年月日: 昭和40年8月17日 / 結論: その他
債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息、損害金に支払つたときは、右制限をこえる部分は、民法第四九一条により、残存元本に充当されるものと解すべきである。