準消費貸借契約において、旧債務の不存在を事由として右契約の効力を争う者は、旧債務の不存在の事実を立証する責任を負う。
準消費貸借契約における旧債務の存否に関する立証責任
民法588条
判旨
準消費貸借契約(民法588条)の有効要件である「旧債務の存在」に関する立証責任は、旧債務の不存在を理由に契約の無効を主張する側が負う。
問題の所在(論点)
民法588条に基づき、金銭その他の物を給付する義務を負う者が、その物を目的とする消費貸借の目的とすることに合意した場合(準消費貸借)において、その前提となる「旧債務の存在」の立証責任を誰が負うべきか。
規範
準消費貸借契約は、その目的となる旧債務が存在しない場合には効力を有しない。しかし、旧債務の存否に関する立証責任は、準消費貸借契約の効力を主張する側が負うのではなく、旧債務の不存在を事由に契約の効力を争う側が負うものと解するのが相当である。
重要事実
訴外Dと上告人の間で、従前の数口にわたる貸金の残元金合計98万円の返還債務を目的とする準消費貸借契約が締結された。上告人は、当該旧債務が存在しないことを理由に、準消費貸借契約の無効(効力の否定)を主張した。
あてはめ
本件において、原審は準消費貸借契約の締結事実を認定している。この場合、旧債務の存在は契約の前提として予定されているため、準消費貸借の成立を主張する者が重ねて旧債務の存在を立証する必要はない。したがって、旧債務が存在しないという例外的な事情を理由に契約を無効としようとする上告人が、その不存在について立証責任を尽くすべきである。
結論
準消費貸借契約の無効を主張する側が、旧債務の不存在を立証できない以上、当該契約は有効である。上告を棄却する。
実務上の射程
準消費貸借における旧債務の存在は契約の成立要件(有効要件)ではあるが、実務上、立証責任は債務者側(不存在を主張する側)に転換されるという点に注意が必要である。答案上では、要件事実論の観点から「準消費貸借成立の抗弁」等において、旧債務の存在を自ら積極的に立証する必要はないという文脈で使用する。
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【結論(判旨の要点)】金銭消費貸借契約の成立について、本証である原告の証拠が被告の反証により真偽不明となった場合、立証責任を負う原告の請求は排斥される。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、被上告人(被告)に対して金銭の貸付けを行ったと主張し、貸借成立を理由に金銭の支払いを求めて提訴した。原審において、上告人は貸借成立…
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