信用保証協会が商人である債務者の委任に基づいて成立した保証債務を履行した場合において、信用保証協会が取得する求償権は、商法第五二二条に定める五年の消滅時効にかかる。
信用保証協会が保証債務の履行によつて取得する求償権と消滅時効
民法167条,商法522条,信用保証協会法20条
判旨
商人である主債務者の委託に基づき保証人が債務を履行した場合、保証人自身が商人でなくとも、その求償権は商法522条の商事債権として5年の消滅時効にかかる。
問題の所在(論点)
商人である主債務者の委託に基づいて非商人が保証を行い、保証債務を履行した場合に発生する求償権が、商法522条(現・商法522条は削除、民法166条1項等に整理されたが、当時の規定に基づく)の「商行為ニ因リテ生シタル債権」として短期消滅時効の適用を受けるか。
規範
商法522条が「商行為ニ因リテ生シタル債権」について短期消滅時効を定めた趣旨は、商取引の迅速な結了を尊重する点にある。したがって、保証人自身が商人でない場合であっても、商人である主債務者の委託に基づく保証行為は、その委託が主債務者の営業のためにするものと推定される(商法503条2項)結果、保証委託契約の両当事者に商法の規定が適用される。そして、当該契約の履行として生じた求償権は、商事債権として5年の短期消滅時効の適用を受けると解するのが相当である。
重要事実
1. 信用保証協会法に基づき設立された上告人(非商人)は、株式会社であるD陶石(商人・主債務者)がE銀行から借り入れた金銭消費貸借債務について、D陶石および連帯保証人である被上告人らの委託に基づき保証(本件保証)を行った。2. 上告人は保証債務を履行し、被上告人らに対して本件求償権を取得したが、当該求償権について商事消滅時効の成否が争点となった。
あてはめ
1. 本件において、主債務者であるD陶石は株式会社であり商人である。そのD陶石の委託に基づく上告人の本件保証は、主債務者の営業のためにするものと推定される。2. したがって、上告人とD陶石・被上告人らとの間の保証委託契約には商法の規定が適用される。3. 上告人のした弁済行為自体は商行為に当たらないとしても、本件求償権は上記保証委託契約の履行という関係において発生したものである。商取引の迅速な結了を要請する商法の趣旨に照らせば、本件求償権は商事債権としての性質を有する。
結論
本件求償権は商事債権として、5年の短期消滅時効の適用を受ける。上告人の請求を棄却した原判決は正当である。
実務上の射程
保証人が信用保証協会等の非商人である場合でも、主債務者の委託が営業のためのものである限り、求償権に商事時効が適用されることを確立した。なお、民法改正により商事時効(旧商法522条)は廃止されたが、現在の民法166条1項の「権利を行使することができることを知った時から5年間」という時効期間の適用関係や、商行為によって生じた債務の連帯性(商法511条)等の判断において、依然として当該債権が商行為性を有するかを判断する際の基準として重要である。
事件番号: 昭和45(オ)622 / 裁判年月日: 昭和46年7月23日 / 結論: 破棄差戻
一、民法一七四条ノ二の規定によつて主たる債務者の債務の短期消滅時効期間が一〇年に延長されるときは、これに応じて保証人の債務の消滅時効期間も同じく一〇年に変ずるものと解すべきである。 二、(省略)