徴税機関が、未納国税額につき納付を催告し、その後六箇月内に差押等の手段をとつたときは、民法第一五三条の準用により、国税徴収権の消滅時効は中断されるものと解すべきである。
国税徴収権の消滅時効の中断と民法第一五三条の準用の有無
旧国税徴収法(明治30年法律第21号)1条,旧国税徴収法(明治30年法律第21号)10条,会計法31条,民法147条,民法153条
判旨
国税徴収権の消滅時効中断に関し、法律に別段の定めがない限り会計法31条に基づき民法の規定が準用される。したがって、旧国税徴収法上の督促以外の方法による催告であっても、その後6か月以内に差押え等の手段を講じれば、民法153条(現150条)の準用により時効中断の効力が認められる。
問題の所在(論点)
1. 課税処分の取消訴訟における国の応訴行為は、所得税本税またはこれに付随する加算税等の徴収権について、民法上の「裁判上の請求」として時効中断の効力を有するか。2. 国税徴収法上の「督促」によらない催告およびその後6か月以内の差押えにより、民法153条(現150条)を準用して時効中断の効力が認められるか。
規範
金銭給付を目的とする国の権利の消滅時効中断については、他の法律に規定がない限り、会計法31条に基づき民法の規定を準用すべきである。国税徴収法に「督促」による時効中断の特則(旧法9条12項)があるからといって、同法が督促以外の催告による時効中断を否定する趣旨とは解されない。したがって、徴税機関による納付の催告およびこれに続く6か月以内の差押え等は、民法の催告に関する規定の準用により時効中断の効力を生じさせる。
重要事実
被上告人に対し、昭和24年度所得税の更正処分がなされた。国(上告人)は、被上告人が提起した当該更正処分の取消訴訟に応訴し、処分は適法であると主張して勝訴判決を得て、これが確定した。その後、国は昭和34年2月9日に加算税等の未納額につき催告書を発し、同月11日に到達した。さらに同年5月11日、これに基づき差押処分を行った。被上告人は、これら加算税等の徴収権は時効により消滅していると主張して争った。
あてはめ
1. 取消訴訟での応訴は、実質的に納税義務を確定させる結果をもたらすが、本税と加算税等は別個の手続で具体化されるものである。ゆえに、本税の更正処分に関する応訴行為が、当然に別個の加算税等についての徴収権を主張したものとはいえず、中断効は及ばない。2. 会計法31条により国税徴収権にも民法の時効規定が準用される。本件において、国は昭和34年2月に催告を行い、その6か月以内である同年5月に差押えを行っている。国税に自力執行権があるからといって、時効中断に関して私法上の債権より不利に扱うべき理由はないため、民法153条の準用により時効中断が認められる。
結論
1. 更正処分取消訴訟への応訴は、加算税等徴収権の時効を中断しない。2. 督促以外の催告であっても、その後6か月以内に差押え等が行われれば、民法の準用により時効は中断する。本件では時効中断が認められる余地があるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
公法上の金銭債権についても、特別の規定がない限り民法の消滅時効規定(中断・更新、停止等)が広く準用されることを示した。行政側による権利行使(催告)が、行政手続上の法定形式(督促)に限定されず、実質的に民法上の催告として機能することを認めた点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和31(オ)733 / 裁判年月日: 昭和33年6月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分における軽微な誤記や訓示規定への違反は、その処分の内容を実質的に左右するものではない限り、処分の効力に影響を及ぼさず、違法事由とはならない。 第1 事案の概要:D村が町制施行によりE町となった後、滞納処分において滞納税金のうち「村民税」を「町民税」と誤記した。また、処分が町条例の定める納期…
事件番号: 昭和33(オ)691 / 裁判年月日: 昭和36年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】更正決定の理由附記欠如は当然無効事由ではなく、取消事由に過ぎない。また、更正決定の取消しを前提とする過納金還付請求訴訟において、当該決定が不可争力を生じている場合、裁判所はその当然無効といえる事情がない限り、公定力に基づき当該決定を有効なものとして取り扱わなければならない。 第1 事案の概要:上告…