昭和三五年三月八日付衛環発第八号都道府県等衛生主管部局長あて厚生省公衆衛生局環境衛生部長通知は、宗教団体の経営する墓地の管理者は埋葬等を請求する者が他の宗教団体の信者であることのみを理由としてその請求を拒むことはできないからこの趣旨にそつて事務処理をすべき旨を求めた行政組織内部における命令にすぎず、従来の法律の解釈、事務の取扱を変更するものではあるが、墓地の管理者らにあらたに埋葬の受忍義務を課する等これらの者の権利義務に直接具体的な法律上の影響を及ぼすものではなく、墓地の経営者からその取消を求める訴を提起することは許されない。
通達の取消の訴が許されないとされた事例
行政事件訴訟法3条2項,墓地、埋葬等に関する法律13条,墓地、埋葬等に関する法律21条
判旨
通達は、行政組織内部における命令にすぎず、国民の権利義務を直接具体的に左右する法規の性質を持たないため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
問題の所在(論点)
上級行政機関が下級行政機関に対して発する法令の解釈・運用に関する「通達」が、抗告訴訟の対象となる「行政処分」に当たるか。
規範
行政事件訴訟法上の「処分」(2条1項)とは、行政庁の行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。通達は、上級行政機関が下級行政機関に対し、その職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発する行政組織内部の命令にすぎない。したがって、通達は原則として法規の性質を持たず、一般の国民を直接拘束するものではないから、処分性は認められない。
重要事実
厚生省公衆衛生局長が都道府県知事宛てに、墓地、埋葬等に関する法律13条(埋葬拒否の正当理由)の解釈運用方針を変更する通達を発した。宗教団体である上告人は、当該通達によって異宗派を理由とする埋葬拒否が制限され、拒否した場合には刑罰(同法21条)を科されるおそれがあるとして、通達の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
本件通達は、行政組織内部における解釈・運用の指針を示すものにすぎず、知事等の行政機関を拘束するにとどまる。国民は直接これに拘束されるものではなく、上告人の墓地経営権や管理権が直接侵害されたり、新たな受忍義務が課されたりすることはない。また、裁判所は通達の解釈に拘束されず、独自の法的判断が可能であるため、通達が発せられたことのみをもって直ちに刑罰を科される地位に立たされるものでもない。したがって、本件通達が国民の権利義務に直接具体的な法律上の影響を及ぼすとは認められない。
結論
本件通達は行政処分に当たらないため、これの取消しを求める訴えは不適法として却下される。
実務上の射程
通達の処分性を一律に否定するリーディングケースである。答案上は、法令の解釈指針を示すにとどまる行政規範の処分性を論じる際、行政内部的な法的効果と国民に対する外部的な法的効果を峻別する基準として引用する。ただし、墓地埋葬法事件という名称で広く知られているが、処分性の定義(直接・具体的・法律上の影響)を導く際の前提知識として活用するのが一般的である。
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土地区画整理法二〇条三項所定の利害関係者の意見書に係る意見を採択すべきでない旨の都道府県知事の通知は、取消訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」にあたらない。