被合併会社が、旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)第九条第五項により、青色申告者として有した繰越欠損金額の損金算入の特典は、合併により、合併後存続する会社に承継されない。
旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)第九条第五項による繰越欠損金額の損金算入の特典は会社合併により承継されるか
旧法人税法(昭和22年法律第28号)9条,旧法人税法(昭和22年法律第28号)3条,商法103条
判旨
合併会社は被合併会社の欠損金繰越控除の特典を当然に承継することはできない。欠損金の繰越控除は、同一の法人が独立の人格と経理の同一性を保持していることを前提とする制度であり、承継には特別な立法が必要である。
問題の所在(論点)
合併が行われた場合、被合併会社が有していた青色申告上の欠損金額の繰越控除の特典は、商法上の包括承継の規定に基づき、当然に合併会社へ承継されるか。また、これを否定することは租税法律主義や実質的課税の原則に反しないか。
規範
法人税法上の欠損金額の繰越控除(法9条5項)は、各事業年度の所得による課税の不均衡を緩和する政策的規定であり、当該法人が独立の人格とその同一性を保っていることを当然の前提とする。したがって、被合併会社に生じた欠損金は、商法上の合併による権利義務の包括承継(商法103条等)の対象には含まれず、特別な立法がない限り、合併会社へ承継されることはない。
重要事実
上告人(合併会社)は、青色申告者である被合併会社を吸収合併した。被合併会社には合併前に生じた欠損金額が存在しており、上告人は当該欠損金額の繰越控除の特典も合併に伴い当然に承継されるものとして税務申告を行った。これに対し、課税当局が承継を認めず更正処分等を行ったため、上告人がその取り消しを求めて争った。
事件番号: 昭和32(オ)1156 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として主張された憲法違反が原審で未主張の事実を前提とする場合、または原判決に影響を及ぼさない事実を前提とする場合は、上告理由として不適法である。 第1 事案の概要:上告人が原判決に対して上告を提起し、憲法違反を主張した事案。しかし、その主張の前提となっている事実は、原審(控訴審)では主張さ…
あてはめ
欠損金額やその繰越控除の特典は、企業会計上の観念的な数値や政策的な権利にすぎず、商法103条が定める当然承継の対象たる「権利義務」には含まれない。繰越控除制度の本質は、同一人格内での経理の一貫性を前提に過重な税負担を緩和する点にある。合併会社とは無関係な経営下で生じた欠損金を、経営主体の異なる合併会社に利用させる合理的理由はなく、受入資産の価額設定により調整も可能である。したがって、承継を認めるには具体的な立法政策が必要である。また、このような取扱いを定めることは租税政策上の考慮に基づくものであり、租税法律主義等にも抵触しない。
結論
被合併会社の欠損金額繰越控除の特典は合併会社に承継されない。したがって、上告人の主張は理由がなく、棄却されるべきである。
実務上の射程
法人税法における「人格の同一性」の重視を示す重要判例である。現行法下では組織再編税制により適格合併等の要件を満たせば欠損金の引継ぎが可能となっているが、本判決の「原則として承継されない」という規範は、明文規定がない場合の解釈指針として現在も射程を有する。
事件番号: 昭和43(行ツ)112 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 破棄自判
株主相互金融を営む会社から融資を希望しない株主に対して支払われる「株主優待金」は、たとえ会社に利益がなく、かつ、株主総会の決議を経ていない違法があるとしても、法人税法上その性質は配当以外のものではありえず、その支出を会社の所得計算上損金に算入することは許されない。 (参照) 一審 東京地裁昭和四〇年一二月一五日判決(行…
事件番号: 昭和41(行ツ)24 / 裁判年月日: 昭和46年3月25日 / 結論: その他
更正処分の取消を求める訴訟の係属中に右処分の一部が処分行政庁によつて取り消された場合には、右訴訟は、すでに取り消された部分の取消しを求める部分については、その利益を失う。
事件番号: 昭和32(オ)718 / 裁判年月日: 昭和35年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人税法上の所得計算は各事業年度を単位とする期間区分の原則に従うため、青色申告の承認を受けていない法人は、天災による損失であっても欠損金の繰越控除を行うことはできない。 第1 事案の概要:上告人(法人)は、天災によって生じた損失について、青色申告の承認を受けていないにもかかわらず、繰越欠損金として…
事件番号: 昭和39(行ツ)6 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: 棄却
破産宣告後の原因に基づく破産者の所得に課せられた所得税は、破産法第四七条第二号但書にいう「破産財団ニ関シテ生シタル」請求権にあたらない。