行政処分の瑕疵が明白であるということは、処分要件の存在を肯定する処分庁の認定の誤認であることが、処分成立の当初から、外形上、客観的に明白であることをさすものと解すべきである。
行政処分の瑕疵が明白であるということの意義。
行政事件訴訟特例法1条
判旨
行政処分が当然無効となるための「瑕疵の明白性」とは、処分成立の当初から誤認であることが外形上、客観的に明白であることを指す。
問題の所在(論点)
行政処分の当然無効の要件である瑕疵の「明白性」の意義、および、瑕疵の明白性を判断する際に「行政庁の調査の怠慢」という主観的事態が考慮されるべきかどうかが問題となった。
規範
行政処分が当然無効であるというためには、処分に重大かつ明白な瑕疵がなければならない。ここに「明白な瑕疵」とは、処分成立の当初から、処分の要件に係る事実の誤認であることが、外形上、客観的に明白である場合を指す。
重要事実
本件は行政処分の有効性が争われた事案である。上告人は、行政庁が調査すべき資料を怠慢により見落とした結果、処分の要件を誤認したものであるから、その瑕疵は客観的な事実に基づき明白であり、処分は無効であると主張した。原審はこの主張を採用しなかったため、上告人が最高裁に判断を求めた。
事件番号: 昭和32(オ)258 / 裁判年月日: 昭和34年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の瑕疵が当該処分を当然に無効とするためには、その瑕疵が重大かつ明白であることを要する。課税対象の誤認に基づく賦課処分であっても、その誤認が直ちに明白かつ重大なものとは認められない場合は、当該処分は無効とはならない。 第1 事案の概要:被上告人(行政庁)は、本件事務机の移出価格が2,500円…
あてはめ
瑕疵が明白であるかどうかは、処分の外形上、客観的に誤認が一見して看取できるか否かによって決すべきである。したがって、行政庁が怠慢により調査すべき資料を見落としたという主観的な事情は、外形上客観的に明白な瑕疵があるかどうかの判定に直接関係するものではない。もっとも、行政庁に怠慢があったか否かにかかわらず、結果として外形上客観的に誤認が明白であると認められる場合には、明白な瑕疵があると認定される。
結論
瑕疵の明白性は外形上・客観的に判断されるべきであり、行政庁の調査の怠慢は直接の判断要素とならない。本件処分に重大かつ明白な瑕疵があるとは認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
処分の無効事由としての「重大明白説」における「明白性」の意義を定義した最重要判例である。答案上は、まず重大明白説を提示した上で、本判決に基づき『処分の当初から外形上、客観的に明白』であるかを検討する。特に行政庁の過失(資料見落とし等)があっても、それが外形的に現れていなければ明白性は否定される方向に働く点に注意が必要である。
事件番号: 昭和34(オ)1215 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
農地所有権が登記簿上の住所から転居した際、郵便局にその旨届出をしておいたため、買収令書の交付に代る公告が行われた昭和二四年三月三一日当時においては、登記簿上の旧住所あての郵便物は転送されすべて新住所で受領されており、買収計画に関する同年二月二一日附の県農地委員会の訴願裁決書(あて先は、いつたん旧住所を記載の上新住所に訂…
事件番号: 昭和32(オ)1158 / 裁判年月日: 昭和36年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に法令の定める除外事由に該当する土地を買収したという違法があっても、直ちに当然無効となるわけではなく、その瑕疵が重大かつ明白である場合に限り無効となる。 第1 事案の概要:本件土地は、客観的には旧自創法5条5号に該当し、本来であれば買収から除外されるべき土地であった。しかし、処分庁は同号の…
事件番号: 昭和37(オ)790 / 裁判年月日: 昭和39年2月18日 / 結論: 破棄自判
無申告加算税を課徴すべき場合に、過少申告加算税を課しても、その課税処分を無効とはいえない。
事件番号: 昭和36(オ)804 / 裁判年月日: 昭和37年7月5日 / 結論: 棄却
行政処分の瑕疵が客観的に明白であるということは、処分関係人の知、不知とは無関係に、また、権限ある国家機関の判定をまつまでもなく、何人の判断によつてもほぼ同一の結論に到達しうる程度に明らかであることを指すものと解すべきである。