呈示期間経過後譲渡された小切手については、銀行振出の自己宛のものであつても、小切手法第二一条の適用がない。
銀行振出の自己宛小切手の期限後譲渡と小切手法第二一条の有無。
小切手法21条,小切手法24条
判旨
小切手が呈示期間経過後に引渡により譲渡された場合、善意取得(小切手法21条)の適用はなく、譲受人は指名債権譲渡の効力しか取得できない。
問題の所在(論点)
呈示期間経過後に小切手の引渡を受けた譲受人が、小切手法21条に基づき、無権利者から小切手上の権利を善意取得することができるか。
規範
小切手が呈示期間経過後に譲渡された場合は、裏書によるか単なる引渡によるかを問わず、指名債権譲渡の効力のみを有し、善意取得(小切手法21条)の規定は適用されない。これは銀行振出の自己宛小切手であっても同様であり、特段の商慣習法も認められない。
重要事実
訴外Dが訴外Eから本件小切手を窃取(あるいは窃取の情を知って取得)した。被上告人は本件小切手の振出人であったが、文言が変造されていた。上告人は、Dから本件小切手の呈示期間が経過した後に引渡を受けて取得した。上告人は、自身が善意無重過失であれば小切手法21条により権利を善意取得できると主張して、振出人である被上告人に対し小切手金等の支払いを求めた。
あてはめ
本件において、上告人が小切手を取得したのは呈示期間の経過後である。小切手法21条は、支払の確実性を担保するための高度な流通性を前提とする規定であり、呈示期間経過後はもはや通常の流通が想定されないため、同条の適用は否定される。たとえ上告人が悪意または重大な過失なく取得したとしても、期間経過後の取得である以上、指名債権譲渡の効力(権利の承継)しか認められない。本件では前主Dが無権利者であるため、上告人も権利を取得できない。
結論
呈示期間経過後の取得には善意取得の適用がないため、上告人は本件小切手上の権利を取得できず、被上告人に対し責任を追及することはできない。
実務上の射程
小切手の善意取得の限界(時間的限界)を示す判例である。答案上は、呈示期間経過後の裏書の効力を定める小切手法24条の趣旨を類推し、引渡による譲渡にも同様の制限が及ぶことを論理の柱とする。自己宛小切手のような信用性の高い証券であっても、期間経過という客観的事実により善意取得の道が閉ざされる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和34(オ)705 / 裁判年月日: 昭和37年9月7日 / 結論: 棄却
為替手形を期限内に善意で取得した者が拒絶証書作成期間経過後にこれを裏書譲渡した場合において、その被裏書人が手形を取得した当時悪意であつても、手形引受人は被裏書人たる所持人に対して手形の振出人に対する悪意の抗弁をもつて対抗することができないと解するのを相当とする。