土地賃貸人からの建物収去土地明渡の請求において、建物所有者が借地法第一〇条により買取請求権を行使した場合に、その建物に賃借人があるときは、右収去明渡の請求には、建物の指図による占有移転を求める趣旨を包合するものと解すべきである。
賃借人のある建物について買取請求権が行使された場合における建物収去土地明渡を求める相手方の請求。
借地法10条,民法184条,民訴法186条
判旨
土地所有者による建物収去土地明渡請求に対し、建物所有者が建物買取請求権を行使した場合、当該明渡請求には建物の引渡を求める申立も包含される。建物が第三者に賃貸されている場合、引渡義務は指図による占有移転によって履行されるべきであり、裁判所は代金支払と引換に建物の引渡を命ずるべきである。
問題の所在(論点)
土地所有者の建物収去土地明渡請求に対し、被告たる建物所有者が建物買取請求権を行使した場合、裁判所は「建物の引渡」についてどのような判断をなすべきか。特に、建物が第三者に賃貸されている場合の引渡しの態様が問題となる。
規範
1. 土地所有者の建物収去土地明渡請求の訴訟において、建物所有者が建物買取請求権(借地借家法13条、旧借地法10条)を行使した場合、裁判所は、特段の事情のない限り、当初の明渡請求の中に「建物の引渡」を求める申立も包含されているものと解して審理すべきである。2. 建物に賃借人等の第三者占有者が存在し、建物所有者が現実の引渡をなし得ない場合、当該引渡義務は「指図による占有移転」を求める趣旨と解するのが相当である。3. 建物買取請求に伴う代金支払義務と建物引渡義務は同時履行の関係に立つため、引換給付判決をなすべきである。
重要事実
土地所有者(上告人)が、借地人から建物を譲り受けた者(被上告人B1)に対し、無断譲渡を理由とする賃貸借契約の解除に基づき、建物収去土地明渡を求めて提訴した。これに対しB1は、建物買取請求権を行使した。当時、建物にはB1から賃借した第三者(被上告人B2)が居住し、引渡しを受けていた。原審は、買取請求によって建物の所有権が土地所有者に移転したことを認めつつも、土地所有者によるB1に対する土地明渡請求を棄却したため、土地所有者が上告した。
事件番号: 昭和30(オ)993 / 裁判年月日: 昭和33年6月6日 / 結論: 棄却
一 家屋収去土地明渡請求に対し家屋買取請求権の行使があつた場合、右明渡請求は家屋の引渡を求める申立を包含する趣旨と解すべきである 二 物の引渡請求に対する留置権の抗弁を認容するときは、引渡請求を棄却することなく、その物に関して生じた債権の弁済と引換に物の引渡を命ずべきである
あてはめ
建物買取請求権の行使により、建物の所有権は売買代金の決定・支払を待たず直ちに土地所有者に移転する。この場合、土地所有者の当初の請求(建物収去土地明渡)は、所有権を得た建物の引渡を求める趣旨を包含すると解するのが合理的である。本件ではB1が建物をB2に賃貸して占有させているが、この場合、B1から土地所有者への引渡しは、B2に対する返還請求権を譲渡する等の「指図による占有移転」の手法により可能である。したがって、B1が留置権を主張している(代金支払まで拒絶する)以上、裁判所は建物の時価を確定した上で、代金支払と引換に建物の引渡(占有移転)を命ずるべきであった。
結論
土地所有者の請求には建物引渡請求が包含される。建物が賃貸されている場合は指図による占有移転による引渡しを命ずべきであり、代金支払と引換に引渡しを認めなかった原判決は審理不尽・理由不備として破棄を免れない。
実務上の射程
建物買取請求権が形成権であり、行使によって即時に売買契約が成立する性質を訴訟手続に反映させた判例である。答案上は、買取請求権行使後の法的処理として「引換給付判決」を導く際の根拠となる。また、第三者が占有している場合でも、指図による占有移転によって引渡請求が肯定される点に実務上の射程がある。
事件番号: 昭和41(オ)312 / 裁判年月日: 昭和43年10月29日 / 結論: 棄却
借地法第一〇条に基づく買取請求権の行使により借地上建物の所有権が移転した場合においても、建物の賃借人は、借家法第一条によつて賃借権を対抗することができる。
事件番号: 昭和33(オ)683 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
他人の不動産を占有する正権原があるとの主張については、その主張をする者に立証責任があると解すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)288 / 裁判年月日: 昭和35年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物を共有して土地を不法占有する者は、共同不法占有者の一人として、他の共有者の有無にかかわらず土地全体を明け渡す義務を負う。この場合、判決の既判力が他の共有者に及ばないことは、当該共有者に対する明渡し請求の可否に影響しない。 第1 事案の概要:上告人は、訴外Dほか1名と本件建物を共有し、当該建物の…
事件番号: 昭和36(オ)646 / 裁判年月日: 昭和38年4月23日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。