一 家屋収去土地明渡請求に対し家屋買取請求権の行使があつた場合、右明渡請求は家屋の引渡を求める申立を包含する趣旨と解すべきである 二 物の引渡請求に対する留置権の抗弁を認容するときは、引渡請求を棄却することなく、その物に関して生じた債権の弁済と引換に物の引渡を命ずべきである
一 家屋収去土地明渡の請求は家屋買取請求権の行使があつた場合に家屋の引渡を求める申立を含むか 二 物の引渡請求に対する留置権の抗弁を認容する場合と判決主文
民訴法186条,民法295条
判旨
建物買取請求権の行使により建物の所有権が地主に移転した場合、地主の家屋収去土地明渡請求には家屋引渡請求の趣旨が包含される。また、当該引渡請求に対し建物代金債権に基づく留置権の抗弁が認められる場合、裁判所は引換給付判決をすべきである。
問題の所在(論点)
1. 建物買取請求権の行使により建物収去義務が消滅し引渡義務が生じた場合、当初の「収去土地明渡請求」を「引渡請求」として認容できるか。2. 留置権の抗弁が認められる場合、裁判所はどのような判決を下すべきか。
規範
1. 建物買取請求権が行使された場合、形成権の行使により建物について売買契約と同一の効果が生じるが、地主による「家屋収去土地明渡請求」には、その性質上、収去の前提となるべき家屋自体の「引渡請求」の趣旨も当然に包含されていると解すべきである。2. 物の引渡請求に対し、被告がその物に関して生じた債権に基づく留置権の抗弁を提出し、これが認められる場合には、請求を棄却するのではなく、債権の弁済と引換えに物の引渡を命ずる「引換給付判決」をなすべきである。
重要事実
土地所有者である被上告人が、地上建物を所有し土地を占有する上告人に対し、建物収去土地明渡を求めて提訴した。これに対し上告人は、賃借権譲渡の承諾がないことを予備的条件として、建物保護法(当時)に基づく建物買取請求権を行使し、その代金債権に基づく留置権を主張した。原審は、買取請求により建物の所有権が被上告人に移転したと判断し、建物収去土地明渡請求の中に引渡請求が含まれるとして、代金支払と引換えに建物の引渡しを命じた。
事件番号: 昭和33(オ)989 / 裁判年月日: 昭和36年2月28日 / 結論: その他
土地賃貸人からの建物収去土地明渡の請求において、建物所有者が借地法第一〇条により買取請求権を行使した場合に、その建物に賃借人があるときは、右収去明渡の請求には、建物の指図による占有移転を求める趣旨を包合するものと解すべきである。
あてはめ
1. 上告人が建物買取請求権を行使したことにより、建物につき売買契約成立と同様の効果が生じ、被上告人が所有権を取得した。この場合、当初の請求である「建物収去」は不能となるが、建物の占有を解いて地主に移転させるという点では「引渡請求」と共通しており、訴訟上の請求には引渡を求める趣旨が含まれていると解するのが相当である。2. また、上告人の建物代金債権は建物に関して生じた債権であり、留置権が成立する。判例によれば、留置権の抗弁が認められるときは、請求の全面棄却ではなく、代金支払と引換えに引渡を命ずるべきである。
結論
上告人の留置権の抗弁を認め、建物代金の支払と引換えに建物の引渡しを命じた原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
買取請求権行使後の訴訟上の取扱いや、留置権行使時の引換給付判決の要否に関する基本判例である。答案上は、建物買取請求権(借地借家法13条等)に伴う留置権の抗弁の帰結として、引換給付判決を導く際の根拠として活用する。また、請求趣旨の合理的な解釈(包含関係)を認める実務上の指針としても重要である。
事件番号: 昭和39(オ)1033 / 裁判年月日: 昭和40年5月4日 / 結論: 棄却
一 土地賃借人が該土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、原則として、右抵当権の効力は当該土地の賃借権に及び、右建物の競落人と賃借人との関係においては、右建物の所有権とともに土地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である。 二 前項の場合には、賃借人は、賃貸人において右賃借権の移転を承諾しないと…
事件番号: 昭和41(オ)312 / 裁判年月日: 昭和43年10月29日 / 結論: 棄却
借地法第一〇条に基づく買取請求権の行使により借地上建物の所有権が移転した場合においても、建物の賃借人は、借家法第一条によつて賃借権を対抗することができる。
事件番号: 昭和39(オ)943 / 裁判年月日: 昭和40年3月5日 / 結論: 棄却
賃借地上の賃借人所有の家屋が第三者に無断譲渡された後に右家屋が他に賃貸された場合において、家屋買取請求権が行使されたときは、土地所有者は、右家屋の所有権を取得すると共に、家屋賃借人に対する賃貸人の地位をも継承する。
事件番号: 昭和33(オ)683 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
他人の不動産を占有する正権原があるとの主張については、その主張をする者に立証責任があると解すべきである。