鑑定に理由が示されていなくても、これを事実認定の資料に供することは違法でない。
理由の示されていない鑑定を事実認定の資料として採用することの適否。
民訴法185条,民訴法第2編第3章第3節鑑定
判旨
不法行為により財産的損害とは別に精神上の苦痛が生じた場合、民法710条に基づき慰謝料の請求が認められる。また、訴訟手続において請求の趣旨が既に特定されているならば、口頭弁論での口頭による内容補充も適法である。
問題の所在(論点)
1. 財産的損害が発生している不法行為事案において、別途慰謝料の請求が認められるか(民法710条の適用範囲)。2. 既に特定されている請求の趣旨を、口頭弁論において口頭で補充・明確化することは許されるか。
規範
不法行為によって、財産的損害の賠償とは別に、別途賠償に値する精神上の損害を受けた事実が認められる場合には、加害者は被害者に対し、民法710条に基づき慰謝料支払義務を負う。また、民事訴訟において請求の趣旨の内容が既にある程度明確に特定されているときは、その内容をさらに明確にするための補充を口頭弁論期日における口頭の陳述によって行うことは妨げられない。
重要事実
上告人(被告)の不法行為により、被上告人(原告)が居住する家屋に隣接するコンクリート塀が崩落する危険が生じた。被上告人は、塀の除去等の危険防止措置を求めるとともに、家屋の損害等の財産的損害の賠償および慰謝料を請求した。一審において被上告人は、請求の趣旨の補充を口頭弁論期日での口頭陳述により行い、工事方法を具体化した。上告人は、財産的損害のほかに慰謝料が発生することや、口頭での請求趣旨補充の適法性を争って上告した。
あてはめ
1. 損害賠償について、不法行為により財産的損害が生じただけでなく、認定された事実関係に基づき、財産賠償とは別に精神上の損害(慰謝料)が生じていることが認められるため、民法710条によりその賠償義務がある。天災による不可抗力や予見可能性の欠如という上告人の主張は、原審の事実認定に反するため採用できない。2. 手続面について、被上告人の請求趣旨の補充は、既に提出された書面により内容が特定されていたものを、口頭弁論で具体化・明確化したに過ぎない。請求の趣旨の補充方法には厳格な方式の定めはなく、適法である。
結論
財産的損害とは別に精神的苦痛が認められる以上、慰謝料請求は認容される。また、口頭による請求趣旨の補充も適法であり、上告は棄却される。
実務上の射程
物件損害等の財産的損害が生じる事案であっても、事案の性質に鑑み精神的苦痛が別個に認められる場合には慰謝料請求が可能であることを示す。また、訴訟実務上、請求の趣旨の同一性を損なわない範囲での明確化・補充が口頭でも許容される点を確認した判例である。
事件番号: 昭和33(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和36年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務不履行によって精神的苦痛が生じた場合、その損害が特別の事情によって生じたものであっても、債務者がその事情を予見し得たときは、精神上の損害(慰謝料)を賠償すべきである。 第1 事案の概要:上告人(合名会社)は、被上告人に対し、特定の土地に家屋を建築して賃貸する契約を締結したが、これを履行しなかっ…