一 投票所の設けられた公民館が三一坪の建物で、内部は玄関に続く廊下を隔てて集会場と会議所兼事務室に分れており、右集会場内に投票に関する設備が設けられ、そのなかで投票に関する手続が行われ、右会議所兼事務室では投票手続に関する何等の事務も処理されず、廊下は集会場への通路として使用されたに止まる場合、廊下と集会場との境をなす玄関正面のガラス窓に、廊下に面して公職選挙法第一七五条の二による候補者氏名、党派別の掲示をしても、右掲示場は同条にいう投票所内ということはできない 二 公職選挙法第一七五条の二による候補者氏名、党派別の掲示が投票所内にされなかつた違法は、選挙無効の原因となり得る
一 公職選挙法第一七五条の二による候補者氏名、党派別の掲示場所が投票所内でないとされた一事例 二 公職選挙法第一七五条の二による候補者氏名、党派別の掲示が投票所内になされなかつた違法と選挙の効力
公職選挙法175条の2,公職選挙法205条
判旨
公職選挙法175条の2第1項にいう「投票所内」の掲示とは、選挙人が投票用紙に候補者氏名を記載する際に再確認できる場所であるべきであり、投票手続が行われる集会場から見えない通路への掲示は同条に違反する。このような掲示場所の規定違反は、選挙の結果に異動を及ぼす虞があるものとして、当該選挙を無効とする理由となり得る。
問題の所在(論点)
公職選挙法175条の2第1項に基づく候補者氏名等の掲示が、投票手続が行われる部屋(集会場)の外の廊下になされた場合、同条にいう「投票所内」の掲示として適法といえるか。また、その違反が選挙の無効事由(同法205条1項)にあたるか。
規範
公職選挙法175条の2が、投票所内の記載場所等に候補者の氏名等を掲示させることとした趣旨は、選挙人が投票用紙に氏名を記載するに際し、候補者の氏名や所属政党等を再確認する機会を与える点にある。したがって、同条にいう「投票所内」とは、投票手続が行われる場所から当該掲示を確認できる状況にある場所を指すと解すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)370 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票包を開いて改めて封印した事実や参観人が柵を乗り越えて入場した事実は、直ちに公職選挙法上の選挙規定違反とはいえず、また選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるとも認められない。 第1 事案の概要:本件選挙において、一度封印された投票包を開封した上で改めて封印し直した事実、および選挙の参観人が会場の柵…
重要事実
本件選挙の第一投票所(公民館)は、廊下を隔てて集会場と事務室に分かれていた。集会場内で投票手続が行われ、事務室や廊下では手続が行われていなかった。候補者の氏名等の掲示は、集会場への通路としてのみ使用されていた廊下と集会場との境にあるガラス窓に、廊下側を向けて貼付されていた。そのため、実際に投票手続を行う集会場の内部からは、当該掲示を全く見ることができない状況にあった。
あてはめ
本件掲示は、投票手続が実際に行われている集会場の外部(廊下)に面して貼付されており、投票用紙への記載を行う選挙人が、記載の際に候補者氏名を再確認できる状態になかった。これは、選挙人に氏名等の再確認の機会を与えるという同法175条の2の趣旨に反する。したがって、客観的に見て「投票所内」の掲示とは認められず、法規に違反する。本件投票所の人数や各候補者の得票数に照らせば、かかる掲示場所の違反は、選挙の結果に異動を及ぼす虞があるものと認められる。
結論
本件掲示は公職選挙法175条の2に違反し、かつ選挙の結果に異動を及ぼす虞があるため、本件選挙は無効である。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、公職選挙法が定める掲示場所の要件を「目的(再確認の機会付与)」から限定的に解釈した事例。物理的に建物の中であっても、投票手続の実態から隔絶された場所は「投票所内」に当たらない。答案上は、選挙手続の適正を判断する際、条文の文言をその設置趣旨に照らして実質的に解釈する具体例として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)461 / 裁判年月日: 昭和32年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】部落(地域組織)による候補者の推薦や選挙運動は直ちに違法ではなく、個別の運動に違法があっても、それが公職選挙法205条1項の「選挙の規定」違反として選挙無効の原因になるものではない。 第1 事案の概要:市議会議員選挙において、各地区(部落)の有志や各種団体幹部が協議し、地域の利益擁護を目的に地域別…
事件番号: 昭和39(行ツ)16 / 裁判年月日: 昭和39年12月10日 / 結論: 破棄自判
一 市議会議員選挙において、公職選挙法第一七三条および第一七四条(昭和三七年法律第一一二号による改正前のもの)の規定による候補者の氏名および党派別掲示に一候補者の所属政党を無所属と誤記した違法は、原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいても、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるものと解すべきである。 二 選挙訴訟の係…
事件番号: 昭和33(オ)737 / 裁判年月日: 昭和33年10月17日 / 結論: 棄却
補充選挙人名簿登録申請期間経過後の申請を受理して登録をした違法があつても、当該補充選挙人名簿が無効であるとはいえない。