支払のためにする手形の呈示義務の免除は、口頭でなされたものであつても、なお、免除者とその相手方との間においては、その効力を有すると解すべきである。
手形呈示義務免除の効力。
手形法38条
判旨
支払のためにする手形の呈示義務の免除は、手形自体に記載がなく口頭でなされた場合であっても、免除者とその相手方との間においては有効である。
問題の所在(論点)
手形法46条が定める「拒絶証書作成免除(無費用償還)」等の文言が手形面上に記載されていない場合、口頭による支払呈示義務の免除の合意は、当事者間において有効か。
規範
手形法上の支払呈示義務の免除(手形法46条参照)が、手形面上への記載を欠く口頭の合意によってなされた場合であっても、その効力は合意の当事者間(免除者とその相手方との間)において有効に認められる。これにより、所持人は現実に支払呈示を行わなくとも、呈示があったのと同一の効果(不渡証書の作成免除を含む)を享受し、遡求権を行使できる。
重要事実
本件手形の裏書人(上告人)は、振出人から「銀行に預金がないので手形を呈示しないでほしい」との依頼を受けた。これに基づき、裏書人は手形所持人(被上告人)に対し、右の事情を告げて本件手形の呈示義務を免除した。その後、所持人は手形の呈示をすることなく、裏書人に対して償還請求(遡求)を提起した。
あてはめ
本件において、裏書人である上告人は、振出人の資金不足という具体的な背景に基づき、所持人である被上告人に対し、明示的に支払呈示を不要とする意思表示を行っている。このような口頭による呈示免除の合意は、手形の流通性を保護するための要式性を害するものではなく、合意の当事者間という相対的な範囲に限定される限り、民法上の私的自治の原則に基づき有効と解される。したがって、被上告人は現実に手形を呈示せずとも、呈示したのと同一の法的効果を享受できるといえる。
結論
口頭による呈示免除の合意は当事者間で有効であり、所持人は呈示なしに裏書人に対し償還請求をなしうる。本件上告は棄却される。
実務上の射程
手形法46条等の要式性に拘束されず、人的抗弁の一種として当事者間での免除を認めた射程の広い判例である。答案上は、遡求の要件である支払呈示を欠く場面において、当事者間の特約(人的抗弁を封じる合意)として構成する際に活用できる。ただし、手形の取得者(第三者)に対する効力については別途慎重な検討を要する点に注意が必要である。
事件番号: 昭和32(オ)300 / 裁判年月日: 昭和34年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】手形上の裏書が口頭弁論終結時までに適法に抹消された場合には、当該裏書は存在しないものとみなされるため、裏書不連続の抗弁は理由を欠くこととなる。 第1 事案の概要:振出人である上告人に対し、受取人である被上告会社が手形金の支払を求めた。本件各手形には、被上告会社から訴外D、訴外Dから訴外E銀行、訴外…