家屋の所有者がその占有する権原のない場合に、右所有者を代表者とする会社がその家屋の全部を借受けて占有しているときは、右会社は、敷地の所有者に対し、敷地の不法占有による損害賠償責任を負う。
家屋の占有者が敷地の不法占有による損害賠償責任を負う事例。
民法709条
判旨
建物所有による土地の不法占有に基づく損害賠償責任の帰属は、建物の所有権移転登記の有無にかかわらず、当該土地に対する事実上の占有状態に基づいて判断される。
問題の所在(論点)
建物の所有権移転を伴う土地の不法占有において、損害賠償義務者を決定する基準は、登記の有無か、それとも事実上の占有状態か。
規範
建物所有による土地の不法占有に基づく損害賠償責任については、建物の譲渡登記の時期にかかわらず、当該土地を事実上占有・支配している状態に基づいて決定すべきである。
重要事実
土地所有者である原告が、土地上に建物を所有して土地を占有する被告らに対し、建物の収去、土地の明渡し、および不法占有に基づく損害賠償を求めた。被告側は、建物の売買に伴う登記未了期間等の責任帰属を争い、登記の有無を基準にすべきと主張した。
あてはめ
事件番号: 昭和32(オ)730 / 裁判年月日: 昭和36年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁済の事実について争いがある場合、債権者が弁済充当の主張立証責任を負うのは、債権者が他の債務の存在を主張立証した後の問題である。 第1 事案の概要:債権者である上告人は、債務者である被上告人に対し、本件債務のほかに固定資産税を支払うべき債務(他の債務)を負担していると主張した。しかし、上告人は原審…
原判決は、売買後登記までの前主ら(B及びD)についてはその占有の態容を認定して損害賠償を命じ、登記後については新所有者(A)の所有による土地占有の事実を認定して損害賠償を命じた。また、上告会社についても登記の時期にかかわらず事実上の占有状態を認定している。このように、形式的な登記の有無のみで決するのではなく、個別の期間ごとに誰が土地を事実上支配していたかを認定した判断は正当である。
結論
建物所有による土地占有に伴う損害賠償責任は、登記の有無に拘わらず、事実上の占有状態によって決まる。したがって、事実上の占有が認められる被告らに損害賠償義務を認めた原判決は維持される。
実務上の射程
物権的請求権(収去明渡請求)の相手方については、特段の事情がない限り登記名義人に認めるのが判例(最判平6・12・20)であるが、不法行為に基づく損害賠償(事務管理等も含む)については、本判決が示す通り「事実上の支配(占有)」を基準とする実質的判断がなされる。答案上、明渡請求と損害賠償請求が併用される事案では、両者の相手方決定基準を区別して記述する必要がある。
事件番号: 昭和30(オ)700 / 裁判年月日: 昭和32年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の土地を占有する者は、正当な権原を主張立証しない限り、故意過失の推定を受け不法占有の責を免れない。この理は、不法占有者の相続人が占有を継続し、かつその相続人が未成年者であっても同様に適用される。 第1 事案の概要:被上告人は、上告人らの亡父Dに対し、土地の占有に基づく金銭支払を請求した。Dの死…
事件番号: 昭和32(オ)624 / 裁判年月日: 昭和34年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(現・借地借家法)の適用を排除する「一時使用のための賃貸借」に該当するか否かは、契約の目的、期間、地上建物の種類、賃貸借成立の経緯等の諸客観的事実に基づき、総合的に判断される。 第1 事案の概要:昭和20年末頃、Dと上告人Aとの間で土地27坪2合について、土蔵の使用貸借と併せて一時使用の賃貸…
事件番号: 昭和34(オ)1276 / 裁判年月日: 昭和35年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強制競売によって建物の所有権を取得した事実は、登記の推定力に依拠せずとも、執行手続等の客観的事実に基づき認定することができる。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、強制競売の手続を通じて、本件建物および宅地の所有権を取得した。これに対し、上告人(被告)側は、原審が「登記の推定力」によって被上告人…
事件番号: 昭和31(オ)532 / 裁判年月日: 昭和34年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物は敷地を離れて存在し得ないため、建物を占有使用する者は、当然にその建物の敷地も占有するものと解される。 第1 事案の概要:第三者(社団法人D協会)が郵政用地の上に建築資材展示場を建築して占有していた。上告人らは、当該建物の一部を占有使用していた。その後、建物の所有者である当該協会が敷地の使用権…