無権代理人甲が乙の所有地を丙に賃貸した後、乙からその土地の譲渡を受けて所有権を取得したときは、丙との賃貸借は、甲についてその効力を生ずるものと解すべきである。
賃貸借の無権代理人が賃貸した土地を取得した場合の効力。
民法113条,民法117条
判旨
賃貸借契約における無催告解除特約は、契約後の賃料支払慣行等によって暗黙のうちに改定され、失効する場合がある。また、無権代理人が行った和解行為であっても、特段の事情がある場合には、本人はその効力を否定できない。
問題の所在(論点)
1. 当初有効であった無催告解除特約が、その後の賃料支払の慣行によって黙示的に改定・失効するか。2. 本人が無権代理人による和解行為の効力を否定できるか。
規範
1. 賃貸借契約上の解除特約について、当初有効に成立したものであっても、その後の当事者間における賃料支払の慣行等の事後的態様によっては、黙示的に改定され失効したものと解し得る。2. 無権代理による行為であっても、特定の事実関係の下では、本人がその効力を否定できない場合がある(表見代理または信義則による効力肯定)。
重要事実
上告人(賃貸人)と相手方(賃借人)との間で締結された本件土地賃貸借契約には、賃料支払の遅滞を理由とする無催告解除特約が付されていた。しかし、実際の賃料支払においては、約定の期日に遅れて支払われることが慣行となっていた。その後、上告人は賃料遅滞を理由に特約に基づき契約を解除したほか、無権代理人による和解の効力も争点となった。原審は、特約の失効および和解の効力維持を認めた。
あてはめ
1. 本件土地の賃料支払に関する事実関係によれば、長期間にわたり賃料支払の遅延が黙認され、特定の支払慣行が成立していたと認められる。このような場合、契約当初の無催告解除特約は暗黙のうちに改定されたと評価でき、催告なしの解除を直ちに認めることはできない。2. 和解については、詳細な事実は判決文からは不明であるが、第一審が認定した事実関係に照らせば、上告人が和解の効力を否定することは信義則等に照らし許されないと解される。
結論
1. 本件契約解除特約は、事後の賃料支払慣行により失効した。2. 本件和解は無権代理によるものであっても、上告人はその効力を否定できず、上告を棄却する。
実務上の射程
賃貸借契約における解除特約の有効性に関し、信頼関係破壊の法理を補完する機能を持つ判例である。特約が形式的に存在していても、実態としての支払慣行がそれを否定する場合には、特約の効力そのものが制限されるという理論構成(黙示の改定)を示す。また、無権代理の追認ないし表見代理に関連し、本人の責任を肯定する際の具体的事情の重要性を示唆している。
事件番号: 昭和27(オ)1062 / 裁判年月日: 昭和29年7月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料不払による無催告解除の特約が存在する場合、その特約に基づく契約の当然消滅を主張することは、意思表示による契約解除を主張するものとは認められない。 第1 事案の概要:上告人(賃貸人)は、被上告人(賃借人)に対し、賃料を一回でも期日に支払わないときは催告を要せず直ちに契約が解除される旨の特約に基づ…
事件番号: 昭和32(オ)597 / 裁判年月日: 昭和34年5月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借終了後の目的物占有継続は、特段の事情がない限り、所有権侵害についての故意・過失が事実上推定される。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)が、賃貸借契約の終了後も目的物を占有し続けている賃借人(上告人)に対し、所有権侵害に基づく不法行為責任(損害賠償)を追及した。上告人側は、訴状において「故意…