一 死者の活動年令期は、死者の経歴、年令、職業、健康状態その他の具体的事情を考慮して算定することができ、必ずしも統計による生命表の有限平均余命の数値に拘束されない。 二 労働者の死亡について第三者が不法行為に基づく損害賠償責任を負担する場合には、労働基準法第七九条に基づく補償義務を履行した使用者は、民法第四二二条の類推により、その履行した時期及び程度で遺族に代位して第三者に対し賠償請求権を取得する。 三 専ら貨物運送を業とする会社の被用者である貨物自動車運転者が、貨物運送にあたりたまたま他人に同乗を許したため、運転者の過失により惹き起された事故において右の者が死亡するに至つた場合であつても、右同乗が運転者との個人的関係に基づくものでなく、荷受会社の集荷課長として積荷の受渡を便にするためのものであつたときは、右運送会社は民法第七一五条の責任を負うと解すべきである。
一 死者の活動年令期の算定。 二 労働基準法第七九条の補償と民法第四二二条。 三 民法第七一五条の使用者責任の認められる事例。
民法185条,民法709条,民法422条,民法715条,労働基準法79条
判旨
被用者が第三者を事業の執行に関する行為圏内に立ち入らせ、その後に被用者の過失により当該第三者に損害を生じさせた場合、その立入りが業務執行の一部、延長、または密接な関係に基づくと認められるときは、使用者は民法715条1項の責任を負う。
問題の所在(論点)
貨物自動車への便乗が、本来の事業目的(貨物運送)に含まれない場合であっても、民法715条1項の「事業の執行について」の要件を満たすか。
規範
被用者の行為が、外観上使用者の事業の執行の一部あるいはその延長、もしくはそれとの密接な関係に基づくものと認められるときは、たとえ被用者が個人的利益を図った行為であっても、民法715条1項にいう「事業の執行について」にあたる。
重要事実
貨物運送会社(被告・上告人)の運転手が、荷受機関の集荷課長であるDに対し、貨物(かまぼこ)の受渡しに不都合が生じるという理由から、その承諾を得て助手席への便乗を許可した。その後、運転手の過失による衝突事故が発生し、便乗していたDが死亡した。会社側は、貨物運送のみが事業であり、人を乗車させることは事業の執行態様ではないとして使用者責任を否定した。
あてはめ
Dは単なる個人的な関係で便乗したのではなく、荷受機関の職員として荷物の受渡しという円滑な業務遂行のために、運転者の承諾を得て乗車したものである。このような第三者の圏内立入りは、運転者による使用者の業務執行の一部、あるいはその延長ないし密接な関係に基づくものと評価できる。したがって、事故が貨物運送という本来の業務執行中に発生した以上、その一環としての便乗中の事故についても、外観上「事業の執行について」なされたものと解される。
結論
貨物運送会社は、運転手の過失によるDの死亡について、民法715条1項に基づき損害賠償責任を負う。
実務上の射程
被用者の行為が本来の職務権限を超えている場合や、社則で禁止されている場合であっても、客観的に見て業務と密接に関連する外観を有していれば「事業の執行について」を肯定する「外形標準説」の立場を維持し、その具体化を図ったものである。
事件番号: 昭和34(オ)1153 / 裁判年月日: 昭和36年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被用者の職務が行き先の変更を伴う輸送業務である場合、使用者からの具体的な命令がないまま変更後の目的地へ向かったとしても、直ちに職務の範囲外とは認められず、民法715条1項の「事業の執行について」に該当し得る。 第1 事案の概要:上告人(使用者)に雇用されていた被用者Dは、E劇団を次の興行予定地へ送…