訴訟手続が必要的共同訴訟人の一人の死亡により中断した場合に、右死亡者について受継手続をなすべき者が他の共同訴訟人の中に在りながら何らその手続をとらないままに控訴申立を始め控訴審における一切の訴訟行為をなした場合においては、共同訴訟人らは上告審においてその訴訟行為の無効を主張することは許されない。
訴訟行為の無効を主張し得ない事例
民訴法62条,民訴法208条,民訴法222条,民訴法第1編(総則)第4章(訴訟手続)第1節(口頭弁論)
判旨
固有必要的共同訴訟において共同訴訟人の一人が死亡し訴訟手続が中断した際、受継手続を怠ったまま控訴審を追行した他の共同訴訟人が、上告審で自らの訴訟行為の無効を主張することは、訴訟信義則上許されない。
問題の所在(論点)
固有必要的共同訴訟における中断事由(一人の死亡)があるにもかかわらず、受継手続を怠って訴訟行為を継続した当事者が、後になって自らその無効を主張することが許されるか。
規範
固有必要的共同訴訟において共同訴訟人の一人が死亡した場合、その中断の効力は全員に及ぶため、中断中になされた控訴等の訴訟行為は原則として無効である。しかし、死亡した者の承継人が他の共同訴訟人の中に含まれる場合に、承継手続を怠ったまま一切の控訴審手続を追行したときは、当該共同訴訟人が自らその行為の無効を主張することは、訴訟経済および訴訟上の信義則に照らし許されない。
重要事実
本件不動産の共有者らが贈与契約の無効確認を求めた訴訟(固有必要的共同訴訟)において、第一審の進行中に共有者の一人Dが死亡した。Dの訴訟代理人の代理権は第一審限りであったため、第一審判決の送達により訴訟手続は中断した。Dの相続人(承継人)には、共同訴訟人の一人であるA2が含まれていた。しかし、A2らは受継手続をとらないまま、死者Dをも委任者として記載した委任状を提出して控訴を提起し、控訴審で一切の訴訟行為を行った。控訴棄却判決を受けた後、A2らは上告審において、控訴申立が中断中になされた無効なものであると主張した。
事件番号: 昭和31(オ)630 / 裁判年月日: 昭和35年8月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死因贈与に近い文脈における意思表示の存否について、贈与者の健康状態や親族関係、贈与の不自然さを考慮しつつも、原審の証拠選択と事実認定を尊重し、意思表示の不存在や再審事由の存在を否定した。 第1 事案の概要:贈与者Dは、唯一の不動産である宅地建物を、妻や実子ら計6名の相続人の了解を得ないまま、孫G(…
あてはめ
本件において、Dの相続人であるA2は他の共同訴訟人とともに、中断の事実を知り得た立場にありながら、あえて受継手続をせず、死者を含む名義で控訴を提起し判決を得ている。このように自ら進んで控訴審での審理を求めた者が、結果が不利になったからといって後から手続の無効を主張することは、従前の訴訟行為と矛盾する態様であり、信義則(民事訴訟法2条参照)に反する。また、既に終了した控訴審の審理を無に帰すことは訴訟経済にも著しく反すると評価される。死者名義が委任状に含まれていたとしても、この結論は左右されない。
結論
上告人らが自らの訴訟行為の無効を主張することは許されず、控訴審の判決を有効なものとして維持した原判決は正当である。
実務上の射程
中断中の訴訟行為の効力という手続的論点において、信義則による無効主張の制限(いわゆる禁反言)を認めた射程の広い判例である。固有必要的共同訴訟における共同訴訟人の一人の死亡が全体に波及する原則を確認しつつ、その瑕疵の治癒あるいは主張制限の法理として答案で活用すべきである。
事件番号: 昭和43(オ)916 / 裁判年月日: 昭和44年7月4日 / 結論: 棄却
一、労働金庫の会員外の者に対する貸付は無効である。 二、労働金庫の員外貸付が無効とされる場合においても、右貸付が判示のような事情のもとにされたものであつて、右債務を担保するために設定された抵当権が実行され、第三者がその抵当物件を競落したときは、債務者は、信義則上、右競落人に対し、競落による所有権の取得を否定することは許…
事件番号: 昭和31(オ)464 / 裁判年月日: 昭和34年9月22日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】債務者が窮迫した事情の下で、債務額の約5倍の価額を有する不動産を代物弁済に供する約定は公序良俗に反し得るが、第三者の支払委託に基づく求償権の担保としての性質も有する場合、その実質的な支払額や求償権の範囲を考慮して慎重に判断すべきである。 第1 事案の概要:債務者(被上告人)は、訴外Dとの間で元金3…
事件番号: 昭和33(オ)602 / 裁判年月日: 昭和36年6月6日 / 結論: 棄却
順次なされた所有権移転登記の中間取得者のみを被告とし、当該被告よりさらに移転登記を受けた者を共同被告としない抹消登記手続請求も許される。