漁業協同組合が漁業法八条二項に規定する事項について総会決議により漁業権行使規則の定めと異なった規律を行うことは、当該決議が水産業協同組合法五〇条五号に規定する特別決議の要件を満たすものであったとしても、許されない。
漁業協同組合が漁業法八条二項に規定する事項について総会決議により漁業権行使規則の定めと異なった規律を行うことの許否
漁業法8条,水産業協同組合法(平成5年法律第23号による改正前のもの)48条1項10号,水産業協同組合法50条5号
判旨
漁業協同組合が漁業権行使規則に定めのない事項を総会決議で決定することは、知事の認可を効力要件とする規則の趣旨に反し、規則と抵触する限度で無効である。
問題の所在(論点)
漁業協同組合において、漁業権行使規則の定めに反して、総会決議により漁業権行使の主体を決定することができるか。また、規則に抵触する総会決議の効力が問われた。
規範
漁業法8条2項・4項等が、漁業権行使規則の制定・変更に都道府県知事の認可を要すると定めているのは、水面の総合利用という公益的見地から、規則の規律を組合の自治的手続のみに委ねない趣旨である。したがって、組合が、漁業を営む権利を有する者の資格等(同条2項各号)について、総会決議により規則の定めと異なる規律を行うことは、特別決議の要件を満たす場合であっても許されない。
重要事実
漁業協同組合Yの漁業権行使規則では、漁業行使者の決定権限を「漁業権管理委員会」に付与していた。しかし、Yの総会では「行使者の決定は総会議決に基づき行う」旨の決議(本件決議)がなされていた。組合員Xが委員会の決定に基づき操業を開始したところ、Yは本件決議を根拠に、総会議決を経ていないとしてXの操業を禁止し(本件禁止決議)、これに従わないXを除名処分(本件除名決議)とした。
事件番号: 昭和60(オ)781 / 裁判年月日: 平成元年7月13日 / 結論: 破棄差戻
共同漁業権放棄の対価として漁業協同組合が取得する補償金の配分は、当該漁業協同組合の総会の特別決議によつて行うべきである。
あてはめ
本件漁業権行使規則は、行使者の決定権限を専ら漁業権管理委員会に認めており、総会に権限を留保する規定はない。これに対し、本件決議は規則の定めと異なる規律(総会への権限留保)を設けるものであり、規則と抵触する限度で無効である。そうすると、委員会の決定を得たXは正当な行使権者であり、総会の承認を欠くことを理由とする本件禁止決議はその前提を欠き無効となる。さらに、無効な禁止決議への不服従を除名事由とした本件除名決議も、除名事由の事実を欠くため無効である。
結論
本件漁業権行使禁止決議及び本件除名決議は、いずれも前提となる法的根拠を欠き無効である。
実務上の射程
漁業権行使規則の法的性質が「知事の認可を要する強行法規的性質」を持つことを示した。組合の最高意思決定機関である総会であっても、規則に反する決議を有効に行うことはできないという「規則の優位」を認めた点に実務上の意義がある。答案では、団体内部の決議の有効性を論じる際、準拠すべき自治規範(定款・規則)の法的性質と、行政庁の監督権限との関係を論じる素材として活用できる。
事件番号: 平成14(受)973 / 裁判年月日: 平成16年10月26日 / 結論: その他
信用金庫の理事を信用金庫法38条所定の手続によることなく解任することはできない。
事件番号: 昭和62(オ)30 / 裁判年月日: 平成元年9月19日 / 結論: 棄却
一 市町村の助役を取締役に選任する旨の株主総会決議は、当該株式会社が地方自治法一四二条の関係私企業に該当する場合であつても、有効である。 二 商法二七六条の規定により監査役との兼任を禁止されている者を監査役に選任する旨の株主総会決議は、有効である。
事件番号: 昭和40(オ)823 / 裁判年月日: 昭和44年5月2日 / 結論: 棄却
労働組合の推薦する特定候補以外の立候補者を支持する組合員の政治活動(選挙運動)を一般的・包括的に制限禁止し、これに違反する行動を行なつた組合員は統制違反として処分されるべき旨を決議した組合大会決議は、労働組合の統制権の限界を超えるものとして無効である。(福岡高裁昭和三九年(ネ)第三二八号同四〇年四月二二日判決、高民集一…
事件番号: 昭和32(オ)1136 / 裁判年月日: 昭和37年1月16日 / 結論: 棄却
一 漁業協同組合の総会の会日当日において、総会の開会が可能であるかぎり、たとえ開会宣言前であつても、招集権者は、開会の取止めを独断ですることはできない。 二 漁業協同組合に組合員として加入するについて理事会の決議を要すると解される場合には、組合の代表機関が組合を代表して承諾することはできない。