共同漁業権放棄の対価として漁業協同組合が取得する補償金の配分は、当該漁業協同組合の総会の特別決議によつて行うべきである。
共同漁業権放棄の対価としての補償金の配分手続
漁業法6条1項,漁業法8条,水産業協同組合法48条1項9号,水産業協同組合法50条4号
判旨
共同漁業権の放棄に伴う補償金は法人たる漁業協同組合に帰属し、その組合員への配分方法は、漁業権放棄と同様に総会の特別決議によって決定すべきである。
問題の所在(論点)
共同漁業権が消滅した場合の漁業補償金の法的帰属、および組合員に対する配分方法を決定するための議決要件(全員一致が必要か、多数決が可能か)。
規範
現行漁業法下の共同漁業権は、古来の入会漁業権とは異なり、法人たる漁業協同組合に単独で帰属する。組合員の「漁業を営む権利」は、組合員としての地位に基づき行使規則に従って行使される団体上の権利にすぎない。したがって、漁業権放棄の対価である補償金の配分については、民法の共有物分割や全員一致の原則は適用されず、水産業協同組合法上の漁業権放棄の手続に準じ、総会の特別決議(組合員半数以上の出席、議決権の3分の2以上の多数)によって決定することができる。
重要事実
漁業協同組合(上告人)は、国道拡幅工事に伴う共同漁業権の一部放棄に対し、国から補償金約1億7670万円を受領した。組合は臨時総会を開催し、補償金の一部を組合に留保し、残額を漁業依存度や年功等の基準により配分する案を、反対者がいる中で多数決により可決した(本件総会決議)。組合員である被上告人は、配分額に納得せず、決議は全員一致を欠き無効であると主張して訴えを提起した。
事件番号: 昭和40(オ)821 / 裁判年月日: 昭和42年7月25日 / 結論: 棄却
一 株主総会の決議は、定款に別段の定めがないかぎり、その議案に対する賛成の議決権数が決議に必要な数に達したことが明白になつた時に成立するものと解すべきであつてかならずしも挙手、起立、投票などの採決の手続をとることを要しない。 二 営業の譲渡に関する株主総会の決議について、譲渡会社の株主が譲受会社の代表取締役であつても、…
あてはめ
まず、現行法上、漁業権の免許は組合に付与され、存続期間の限定や行使規則による制約があることから、管理権と収益権能が分有される「総有」関係は否定される。次に、補償金は法人たる組合に帰属するが、現実に損失を被る組合員に配分されるべき性質を持つ。そして、水産業協同組合法が漁業権の放棄について総会の特別決議を要すると定めている(同法48条等)ことから、その対価の配分方法も、同様の民主的・団体的合意形成によるべきといえる。したがって、全員一致を欠くとしても、適法な総会の特別決議を経てなされた本件配分基準の決定は、団体規制として有効である。
結論
本件補償金の配分は総会の特別決議によって行うべきであり、全員一致を欠くことを理由に決議を無効とした原判決は破棄される。
実務上の射程
漁業権の「総有」的性質を否定し、漁協の団体法的性格を強調した重要判例である。答案上は、特別の慣習がない限り、漁業補償金の分配基準決定に「組合員全員の同意」は不要であり、特別決議で足りるという規範として活用する。また、漁業権行使権の法的性質(組合員の地位に基づく権利)を論じる際の基礎となる。
事件番号: 昭和43(オ)550 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: 棄却
一、理事の選挙を指名推選の方法によつて行なうことにつき、当初は反対意見があつても、結局その意見が維持されず、出席者中に異議がなく可決されたときは、中小企業等協同組合法第三五条第九項の「出席者中に異議がないとき」にあたる。 二、当初被指名人一人について反対意見があつても、その後撤回され、結局出席者全員の同意があつたときは…
事件番号: 昭和38(オ)120 / 裁判年月日: 昭和39年12月11日 / 結論: 棄却
株式会社役員に対する退職慰労金支給に関する「金額、支給期日、支払方法を取締役会に一任する」との株主総会決議をした場合でも、右決議は、当該会社において慣例となつている一定の支給基準によつて支給すべき趣旨であるときは、商法第二六九条の趣旨に反して無効であるということはできない。
事件番号: 昭和52(オ)833 / 裁判年月日: 昭和53年4月14日 / 結論: 棄却
有限会社の社員総会において、その社員である特定の者を取締役に選任すべき決議をする場合に、その特定の者は、右決議につき特別の利害関係を有する者にあたらない。