一 常習犯の中間に別罪の確定裁判が介在しても、そのためにその常習犯が二個の常習犯に分割されるものではないと解すべきである。 二 右の場合、その常習犯は別罪の裁判確定後に終了したものであるから、右確定裁判を経た罪とは刑法第四五条の併合罪の関係に立つものではない。 三 原判決が、刑法第四五条の適用を誤り二個の刑を言い渡すべきであるのに一個の刑を言い渡した場合には、その違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるが、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
一 常習犯の中間に別罪の確定裁判が介在した場合における罪数。 二 右常習犯と確定裁判を経た罪とは併合罪か。 三 刑訴法第四一一条第一号に当らないとされた事例。
刑法45条,盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律2条4号,刑訴法411条1号
判旨
数個の窃盗行為が常習としてなされた包括一罪の中間に別種の罪の確定裁判が介在する場合、当該包括一罪は分割されず、その終了時を基準として確定裁判後の犯罪として取り扱うべきである。
問題の所在(論点)
常習特殊窃盗罪(包括一罪)の継続中に、別種の罪について裁判が確定した場合、包括一罪は分割されるのか。また、その場合の刑法45条(併合罪)の適用関係はいかにあるべきか。
規範
数個の同種行為が常習としてなされた包括一罪において、その中間に別罪の確定裁判が介在しても、一個の常習犯としての性格は維持され、二個に分割されることはない。刑法45条の併合罪関係の成否については、包括一罪の終了時を基準に判断し、当該常習犯の全体を確定裁判後の犯罪として扱うのが相当である。
重要事実
被告人は、常習として複数回の窃盗(常習特殊窃盗)を行ったが、その一連の行為の中間に、道路交通法違反の罪の裁判が確定していた。第一審は、確定裁判の前後で常習特殊窃盗罪を二つに分割し、確定前の行為(第四の一)については別罪(第二、第三)と共に刑法45条後段の併合罪として処理し、確定後の行為(第四の二)には別個の刑を言い渡した。これに対し原判決は、常習一罪は分割されないとして包括して一個の刑を言い渡したため、その適条の正否が問題となった。
あてはめ
常習特殊窃盗は性質上、数個の行為を包括して一個の常習犯を構成する。本件では、中間に別罪(道交法違反)の確定裁判が介在しているが、これにより常習犯としての包括的な評価が断絶し分割されるものではない。したがって、当該常習犯の終了時が確定裁判後である以上、その全体を「確定裁判後の犯罪」として取り扱うべきである。これに対し、本件の判示第二、第三の罪は確定裁判前の犯罪であるから、これらと常習特殊窃盗罪との間には併合罪関係は認められず、別個の刑が言い渡されるべきである。原判決は包括一罪の分割を否定した点では正当であるが、併合罪関係の処理において誤りがある。
結論
常習犯の中間に別罪の確定裁判が介在しても包括一罪は分割されず、全体が確定裁判後の罪となる。原判決には法令適用の誤りがあるが、破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
包括一罪の罪数論と刑法45条の併合罪(確定裁判による遮断)の限界を示す重要判例である。答案上は、常習犯や継続犯が確定裁判を跨いで行われた場合の処断を論じる際に活用する。確定裁判による遮断(刑法45条後段)は、確定裁判の「後」に終了した包括一罪全体には及ばないという論理を明示する際に用いる。
事件番号: 昭和43(あ)2655 / 裁判年月日: 昭和44年6月5日 / 結論: 棄却
一 盗犯等の防止及び処分に関する法律三条は、窃盗その他同法二条所定の罪を行なう習癖を有する者を、その習癖のない者より重く処罰するため、通常の窃盗その他の罪とは異なる新たな犯罪類型を定めたものである。 二 いわゆる常習累犯窃盗の罪についても、刑法の累犯加重の規定の適用がある。
事件番号: 令和2(あ)919 / 裁判年月日: 令和3年6月28日 / 結論: 棄却
前訴で住居侵入,窃盗の訴因につき有罪の第1審判決が確定した場合において,後訴の訴因である常習特殊窃盗を構成する住居侵入,窃盗の各行為が前訴の第1審判決後にされたものであるときは,前訴の訴因が常習性の発露として行われたか否かについて検討するまでもなく,前訴の確定判決による一事不再理効は,後訴に及ばない。